『セクシー田中さん』の悲劇で加速する 日本マンガ実写化ビジネスの海外流出スピン経済の歩き方(1/8 ページ)

» 2024年01月31日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。

 果たして、これが「感謝しております」という人の訃報に付けなくてはいけない文言なのだろうか。

 人気漫画家・芦原妃名子さんが亡くなったことを受けた日本テレビの哀悼コメントが、「露骨な責任逃れ」「いま言うべきことか」などと批判を呼んでいる。芦原さんが亡くなる直前に世に投げかけた「言葉」を全否定するようなトーンだからだ。

 きっかけは、日本テレビ系で2023年10〜12月に放送したドラマ『セクシー田中さん』の原作者である芦原さんが自身のブログとXアカウント(旧Twitter)で、全10話のうち、9話と10話の脚本を自ら書くことになった経緯を説明したことだった。

芦原妃名子さん原作のテレビドラマ『セクシー田中さん』(出典:日本テレビ)
日本テレビによる追悼文(出典:日本テレビ)

 芦原さんによれば、実写化にあたってドラマ制作スタッフらと話し合いをして、「必ず漫画に忠実に」することや、そうでない場合には芦原さん自身が加筆修正することなどの約束を取り付けた。また、漫画がまだ未完であることから、ドラマのラストは芦原さん自身が“あらすじ”やセリフを用意し、脚本に落とし込む際には原則変更しないことも希望して、その条件も呑んでもらっていたという。

 しかし、フタを開ければこれらの取り決めが守られることはなかった。芦原さんの意図に反し、毎回大きく改変したプロットや脚本が提出され、登場人物のキャラも世界観もガンガン手を加えられていた。さすがにこれは話が違いすぎると、芦原さん自身が9話と10話の脚本を手がけたというのだ。

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