セブン&アイが、セブン‐イレブンの世界展開で重視しているのは「食」の強化だ。井阪社長は「フレッシュフードの売り上げ構成比と、客数には相関関係がある」としている。フレッシュフードとは、米飯やサンドイッチ、調理パンにサラダなどの商品を指す。例えば、フレッシュフードが約4割を占める日本では、1日平均で900人近くが来店する。オーストラリアでは約2割で650人ほど。カナダでは1割強で550人ほどとなっている。
要はどの国も「食」を強化していくことで、来店人数を増やして、利益率を向上できる自信があるようだ。
セブン&アイの24年2月期、チェーン全店売り上げ構成比を見ると、ファスト・フード29.2%、日配食品12.5%、加工食品26.6%、非食品31.7%となっている。つまり、実績が上がっていなかった国でも、ファストフードと日配食品の強化で、店舗が活性化して飛躍的に成長できるというわけだ。
2021年の東京五輪はコロナ禍の最中でもあり、諸外国の報道陣も街中のレストランになかなか繰り出せなかったとされる。代わって、セブン‐イレブンに限らず、日本のコンビニのいつでも開いている便利さが重宝され、その魅力が世界的に発信された。
特に「食」に関して、弁当やおにぎり、サンドイッチや総菜など、バラエティの豊かさやおいしさが評判になっていた。食は各国・地域・民族の伝統もあるので、どの国でも同じように品ぞろえをしてもうまくいかない。しかし、フレッシュフード重視という軸になる考え方を浸透させれば、アイテムが違えども、来店客数を増やせると考えているようだ。
日本企業の株価は、バブル崩壊以来30年の経済停滞で、全般に低くなっているといわれる。セブン&アイの株価も同様に、円安の進行などが影響して割安感が増している可能性がある。だからこそ、簡単に「買えるのではないか」と考える外資も出てくる。
欧米の投資家の間には「コングロマリット・ディスカウント」という考え方がある。リスク分散のために企業はポートフォリオを組んで事業多角化を図るが、異業種が組み合わさった多角化はシナジー効果が薄く、経営が非効率になるというものだ。そのため、多角化を行っている企業に対する投資家の評価は低く、株価が低くなってしまう。
セブン&アイは流通のマルチチャネルを目指したが、このコングロマリット・ディスカウントにハマってしまった。米国のモノいう株主、バリューアクト・キャピタル・マネジメントが、繰り返し事業をコンビニに絞れと提案していたのは、このコングロマリット・ディスカウントを脱し、正しく企業価値を評価してもらえるテーブルに着けと警鐘を鳴らしていたともいえる。
こうした事情もあり、セブン&アイはかつてM&Aで取得した、長期低迷が続く百貨店のそごう・西武を、2023年9月に米国の投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。また、祖業であるスーパーのイトーヨーカ堂が総合スーパーの退潮により、慢性的な不振に直面。衣料品平場に大手アパレルのアダストリアが開発したブランド「FOUND GOOD」を導入するなど、立て直しに懸命だ。
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セブン「宅配ピザ」参入の衝撃 テスト販売から一気に拡大も納得の理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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