そもそも多くの企業で「人物重視」という言語明瞭意味不明の採用基準が掲げられていますが、長年、一緒に働いている同僚だって、本当の人物像など分かりません。それなのに、数回面接した程度でいったい何が分かるというのでしょうか。
数年前には「面接だけじゃ分からん!」と、グループディスカッションを取り入れる企業が増えました。グループディスカッションを導入した企業は当初「こっちの方が一人一人のコミュニケーション能力や協調性が分かる」「そうそう、リーダーシップや知識量とかも、多面的に評価できるしね」と手応えを話していましたが、実際に増えたのは「人物重視」の社員ではなく、いわゆる就活エリートです。その中には入社後、戦力外の烙印(らくいん)を押されてしまった人もいるでしょう。
企業が面接やグループディスカッションで何を見ているのかが分かれば、学生側だってそれ相応の対策を講じます。学生の中には、就職のための専門学校に通い、面接対策のための家庭教師を雇う人もいるし、親が積極的に“トレーニング先”を探してくるケースも少なくないのです。
いずれにしても、論理に基づいて設けられた仕組みは、論理で打破できます。「コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力の高い人物と評価されるためには、どうしたらいいか?」というスキルを、さまざまな角度から論理的に分析し、試験にパスするためのスキルを向上させるためのハウツーを論理的に構築すればいいだけのこと。
しょせんは人間が考えることなのですから、プロの手を借りればどうにでもなる。おまけに、世の中には相手が何を聞き出そうとしているか、相手が何を自分に望んでいるのかを、うまく察知し、求められている“自分”をうまく演じる力の高い人がいます。
私も調査研究などを行う際に、「半構造化面接」という、あらかじめ定められた枠組みを守りながらも、面接の細部に関しては柔軟な対応をする手法を用いて、インタビューを行うことがあるのですが、これがなかなか難しいのです。
「きっとこういうふうに答えた方が喜ぶはずだ」と、察知する能力の高い人は「自分」を見せるのではなく、そこで求められている「自分のストーリー」を組み立て、演じるのです。要するにイタチごっこです。
冒頭から思うがままに筆を走らせてきましたが、「戦力となる社員」を望むのであれば、企業は面接を「過去=学生時代の功績」を聞く機会から、「共に働く仲間として何ができるか?」を知る機会の面接にした方がいいと思うのです。
「相談しない部下」が増加、何におびえているのか? 上司ができる、ただ一つのこと
なぜ、すぐに「辞めます!」という新入社員が増えているのか
「学歴フィルターは努力の結果」と思い込んでいる人が知らない、残酷すぎる真実
自ら“窓際社員”になる若者──「静かな退職」が増えるワケ
「転勤はイヤ、配属ガチャもイヤ」――若手の待遇改善のウラで失われるものCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング