河合: これってちょっとだけいじわるな見方をすると「能力発揮の機会は作った。あとは本人次第だ」っていうことですね。
北山: そうですね。ただ、社員の選択という意味で言うと「管理職を目指したい」という人と、「プレーヤーとしてキャリアをもっと突き詰めていきたい」という人、あるいはライフステージによっても違うと思うんですよね。このあたりは柔軟に選択できるようになります。
河合: それは何歳で選択することになるんですか?
北山: 基本的には毎年キャリアシートを書いてもらう中で、選択できるようにするので1年目からできます。ライフステージに応じて「向こう3年間はマネジメントというよりはプレーヤーとしてのキャリアの方がいいな」とか、スローキャリアを希望する人もいますよね。
河合: 40過ぎて今更だけど……っていうのもOKですか。
北山: もちろんです。ただ当然そこに行けるかどうかは評価次第です。新しいこの制度では「人材ポリシー」という考えがあり、会社社員に提供する価値を「自分らしさの表現」と呼んでいます。
河合: 昭和のなごりの悪しき部分として「能力発揮の機会がありそうでなかった」「結局上司が決めてた」「上司がまだと言えばまだだし、上司がお前行けよと言ったら動くし」といった具合に、上司が“会社員人生の最大のリスク”になり得るわけですが、このあたりはどうなるんですか? つまり、評価する人の教育ですね。
北山: 2つの観点があると思っています。一つは、管理職の評価リテラシーやそのフィードバックスキルが弱かった点です。ピープルマネジメントなど、いわゆる体系的な学びを会社が提供できていなかった。自分が育ってきた中で出会った上司の上司像をロールモデルにするパターンと、反面教師にするパターンで、それで自分がどういうマネジメントをやるかって自分で考える。これまでは、こういうスタイルがあったと思います。
ここ10年ぐらいでかなりマネジメント教育を増やすなど、いろいろ力を割いてやっていますけれども、やはり現場のマネジメントはタスクマネジメントで業務推進が中心。その中で人を育てていくスタイルです。この部分をわれわれは反省していて、会社としてもっとマネジメントの皆さんへの人的資本投資をしなくてはならないと考えています。
一方で、各職場で「上司は部下を偉くすることが、上司の最大の誉れだ」という考えが根付いているんですね。それはある意味、上司と部下の関係性としては素晴らしい。上司も部下をしっかりと育てて偉くしてやりたいっていうパッションを持っている人がたくさんいます。なので、昇進とかの話になると、とにかく部下のいいところをガンガン上げてくるんですよね。部下のいいところをあげることに一生懸命になってしまう場合も少なくありません。
河合: 情ですね。でも、情だけだったり、それが強くなりすぎるとよろしくない。
北山: はい、ここの部分にテクニカルといいますか、ピープルマネジメントのいろんなスキルセット評価リテラシーというのをセットするのがこれからの在り方かなと思っています。課題をより良くするとか、強みを伸ばすとか。求められている人材マネジメントの在り方を、われわれ人事の方から提供していけば、すごく良くなると思うんですよね。
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