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1on1は「どんな部下にも傾聴」では意味がない 部下の4タイプ別、効果的な声掛けとは(2/2 ページ)

» 2024年11月14日 07時00分 公開
[荒金泰史ITmedia]
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部下の「性格タイプ」を踏まえて1on1の質向上

 前編で紹介した通り、部下と接するに当たっては「創造重視タイプ」「結果重視タイプ」「調和重視タイプ」「秩序重視タイプ」の4タイプに分けることが役立ちます(図表2)。

 各タイプはそれぞれ性格が違い、有効な関わり方も異なります。1on1の際、部下の性格タイプを踏まえて関わると、コミュニケーションの質を高められます。

photo 【図表2】キャラクター4分類のタイプ診断

「創造重視タイプ」に必要なのは、チームで意見を出し合える環境

 1つ目の「創造重視タイプ」は、チームで一体となって1つのゴールに向かいたい人たちですから、チームで意見を出し合いながら仕事ができる環境を作るとよいでしょう。

 新しさ、面白さ、アイデアを重視するため、称賛や肯定からコミュニケーションをはじめて、本人のアイデアをまず認めてあげることも大切です。

 また、思い・ビジョン・理念にひかれる人たちですから、ぜひ上司個人の思いや期待を積極的に伝えてください。好きな人たちとの接点を増やすことも有効です。

 なお、個人で仕事を進めなくてはならない環境や、コミュニケーションが少ない環境はNGです。本人のアイデアに対して、指摘やアドバイスからはじめるのも良くありません。上司の思いや期待が見えにくい環境も好みません。

「結果重視タイプ」とは成果基準をすり合わせ、やり方は本人に任せる

 「結果重視タイプ」は、成果基準をすり合わせた上でやり方は本人に任せると、良い結果につながりやすいです。高い目標に最短距離で到達したいと思っており、合理性を大事にする傾向がありますから、何事も結論から簡潔に伝えるとよいでしょう。

 自分自身の成長にとって意味があることにひかれるため、キャリアに対して仕事を意味付けるとモチベーションが高まります。

 また、目的が分からないことや説明の筋が通っていないことを嫌います。指示の際は、目的と結論を明確に伝え、筋の通った説明をしましょう。進捗や進め方を細かく確認するのもNGです。

 ただし、本人がうまくいっていないときに放置してはいけません。このタイプは基本的には任せてよいのですが、悩みを抱えているときには上司が積極的に声をかけ、相談に乗った方がよいでしょう。

「調和重視タイプ」には、特に用がなくても積極的に声をかける

 3つ目の「調和重視タイプ」は、皆で話し合って進めたいと思っていますから、和やかな雰囲気づくりを心掛けるとよいでしょう。皆の気持ちや皆の役に立っていることを大事にする傾向があり、温かい気持ちや感謝に魅力を感じる人たちです。

 このタイプの部下には、特に用がなくても積極的に声をかけたり、具体的に感謝を伝えたりすることをおすすめします。また、本人ができていることに目を向けてもらうと、モチベーションが高まるはずです。

 調和重視タイプに対しては、上司の不機嫌さや忙しさを態度に出さない方がよいです。対策やアドバイスだけを伝えたり、「困ったことがあれば相談して」などと言って放置したり、ばっさりと優先度をつけて業務を渡したりするのもNGです。このタイプは、まず気持ちを受け止めることが最も大切なのです。

「秩序重視タイプ」には説明を尽くし、不安の解消を心掛ける

 4つ目の「秩序重視タイプ」は、自分の役割と手順を明確にして着実に進めたいと思っていますから、上司は部下の質問や疑問に説明を尽くし、不安の解消を心掛けるとよいでしょう。

 また、次のアクションのイメージがついているかどうかを適宜確認することをおすすめします。責任を果たすことや自分の中での一貫性や納得感を大事にする傾向がありますから、事業の全体像と、そのなかでの自業務の位置付けを伝えると、気持ちよく働いてもらえるはずです。

 秩序重視タイプには、根拠なく「大丈夫」「気にしなくていいよ」などと言ってはいけません。メンバーからの質問に対して「やってみないと分からない」としか回答しないのもNGです。何の説明もなく、以前と異なる指示を出したりするのもよくありません。こうした対応をすると、不安が大きくなってしまうからです。

「創造重視×秩序重視」と「結果重視×調和重視」は相性が悪く要注意

 最後に、相性の悪い上司・部下のタイプについて触れます。

 1つ目は「上司:創造重視タイプ×部下:秩序重視タイプ」です。上司はやりながら進め方を考えるタイプですが、部下は事前にプロセスを設計してから丁寧に進めたいと思っており、細かなことが気になりがちです。

 この組み合わせの場合、上司に相談しても「やってみないと分からない」としか言われないため、部下は相談しても意味がないと感じ、やがて相談しなくなる可能性が高いです。

 2つ目は「上司:結果重視タイプ×部下:調和重視タイプ」です。上司は最短距離で仕事を進めたいため、部下に業務の優先順位を決めてもらいたいと思っていますが、部下はどんな仕事も大切にしたいタイプで、仕事に優先度をつけたくありません。

 この組み合わせの場合、部下が相談しても「このタイミングで必要な相談?」などと上司に切り返されてしまうため、部下が質問できなくなっていく可能性が高いです。

 どちらの場合も、上司が部下に合わせることが大切です。得意ではないかもしれませんが、部下のタイプに合わせた対応を取ってみてください。きっと良い結果につながります。

著者プロフィール

荒金 泰史(あらがね・やすし)

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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ マネジャー

1on1支援ツール「INSIDES」事業責任者。入社以来、一貫して人材アセスメント事業に従事。顧客の人事課題に対し、データ/ソフトの両面からソリューションを提供。新たな人事アセスメントの開発業務と、実証研究にも関わる。入社者の早期離職、メンタルヘルス予防、エンゲージメントHR Technologyの領域に詳しい。著書に『人事・経営陣に知ってほしいエンゲージメントの“真”常識』(翔泳社)がある。

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