上司と部下のコミュニケーションのため、1on1ミーティングを導入する企業は増えています。
これに伴い、「今の部下の状態から、どんな道筋を描いて成長につなげればいいのかが分からない」「とりあえず傾聴はしているが、あまり実のある話も出てこない」と、そのやり方に悩む上司の方も多いです。
どんな部下にも同じような対応をしているだけでは、その部下の魅力を引き出すどころか、ストレスを与えてしまいかねません。本記事では、離職を防ぐ1on1コミュニケーションの工夫についてお伝えします。
記事前編でご紹介した通り、働く際の気持ち「ワークメンタリティ」は「充実・懸命・淡々・悶々・窮々」の5段階に分けられます。
このうち要注意なのは「悶々」と「窮々」です。部下がこの2段階から脱することができれば、もったいない離職の多くを防げるでしょう。本記事では、従業員のワークメンタリティを「悶々」「窮々」から「淡々」に引き上げるための方策を詳しく説明します。
5段階のうち最低の状態「窮々」とは、自身の状態を客観視したり、言語化したりできない状況に陥っていることを意味します。目の前の仕事に追われて、余裕をなくしたり、視野が狭くなったりしているからです。
部下を「窮々から悶々へ」と改善するときの目指すゴールは「自分がつらい状況にあると自覚してもらう」ことです。自分の体調や心境、負担を、自分なりの言葉で語れるようになって客観視が進んだら、ひとまず「悶々」に改善したと見てよいでしょう。
その際、上司の実践ポイントは4つあります。1つ目は、本人の「大丈夫」に安心せず、無理をしないように上司が線を引くことです。部下は現状を客観視できていないわけですから、本人の「大丈夫」をうのみにするのはNGです。本人を当てにせず、上司が部下の業務量を調整する必要があります。
2つ目に、例えば「一番忙しかった7月と比べてどう?」などのように、上司が過去と比較して具体的な質問を投げかけるのが効果的です。具体的に質問することで、本人が自分の状態を客観視・言語化できるようになります。「大丈夫?」のような抽象的な呼びかけにとどめるのはNGです。
3つ目に、上司が確認するためではなく、部下に自覚してもらうための質問をすることが大切です。例えば「気持ちの面で変化はある?」「この半期で楽しかったこと、悲しかったこと、つらかったことは何?」のような質問は、部下の自覚を促すことができる良い質問です。
反対に、単に「最近どう?」と聞くだけではNGです。上司の皆さんは、1on1で部下の自覚を促すことを常に意識してください。
4つ目に、本人の自覚が進んだら、その状態をともに改善したいことをしっかりと部下に伝えましょう。自覚が進めば、部下はすでに「窮々」を脱しつつあると考えて構いません。
5段階のうち2つ目に悪い状態「悶々」とは、言いたいことがあっても、内側に抱え込んでいることを意味します。「悶々」の部下は、不安や不満に捉われるあまり、仕事に前向きに打ち込めなくなっているのです。
部下を「悶々から淡々へ」と改善するときの目指すゴールは、部下に「いろいろ思っていたけれど、話を真剣に聞いてもらえてスッキリしたと感じてもらう」ことです。部下が「上司は自分の言いたいことや気持ちをよく分かってくれる」と思っていることが上司に伝わったとき、部下は「淡々」に改善していると見てよいでしょう。
その際、上司の実践ポイントは4つあります。
1つ目に、上司は部下の思いを100%引き出すことに集中しましょう。この段階では、とにかく部下の話を傾聴して、相手の不安や不満を受け止めることを最優先してください。
2つ目は、上司自身が部下に対して何か言いたい気持ちをグッとこらえることです。「悶々」の相手に対して、正論やアドバイスはNGです。この段階では、上司が部下の問題を解決しようとする必要は一切ないのです。
3つ目は、部下の話を聴くときに手を止め、相手の目を見て、相づちを打ちながら聴くことです。傾聴の姿勢を意識してください。
4つ目に、話しやすくするためのテクニックとして、「ポジティブな話題から始める」「仮説をぶつける」「意見として聴く」の3つを心掛けてみてください。例えば、「〇〇がつらいと感じているようだけど、具体的にどういうことか教えてもらえる?」のように、仮説をぶつけるコミュニケーションが有効です。
こうして「淡々」に達したら、部下がもったいない離職をする可能性はかなり低くなります。1on1を通じて、まずは部下全員を「淡々」まで引き上げることを目指しましょう。
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