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仕事のやり方も「AIが勝手に考える」時代に AIエージェント、3タイプ別の特徴は

» 2024年11月18日 08時30分 公開
[湯川鶴章、エクサウィザーズ AI新聞編集長]
ExaWizards

 「OpenAI o1とその後継バージョンが備えた論理的思考や、大きな問題を分解し細かな問題を計画的に解く能力が、AIエージェント時代を切り開いていくのは間違いない。2025年は非常に重要な年になるように思う」──OpenAIの開発者向けイベントに登壇した同社プロダクト責任者のケビン・ウェイル氏はそう語った。

 「AIエージェント時代」とは、どういう時代なのだろう。

AIエージェント時代とは?(画像:ゲッティイメージズより)

 AIエージェントの定義はまだ流動的。人によって定義が微妙に異なるが、最も一般的なのが「自分で考え自律的に動くAI」だろう。これまでのAIは「もの知りAI」で、人間が質問したことに回答してくれた。

 ところがOpenAI o1は「考える」AIになったと言われる。この能力により、人間のリクエストに対して、何をすればいいのかを自ら判断し、自律的に行動することが可能になった。

 例えば、OpenAIのライバル社である米Anthropic社が発表した「Computer Use」と呼ばれる新機能では「友達と明日の朝、日の出を見に行きたいので、サンフランシスコ周辺で日の出を見るのに最適な場所と、日の出の時間を調べて、道順を調べてスケジュールに入れておいて」と命令しておけば、あとは全部AIがやってくれる。

 日の出を見るのに最適な場所や日の出時間の検索は、AIが自分で検索キーワードを考えて、Googleの検索窓に自分で入力する。その結果を基に次に、Googleマップで自宅から日の出観察の場所までの行き方を検索。日の出に間に合うように出発時間を決めたあと、Googleスケジュールに予定を入れてくれる。こうした作業を全部AIがやってくれるわけだ。まさしく「自分で考え、自律的に動くAIだ」

 具体的にどのようなAIエージェントが登場しているのだろうか。企業向け会話型AIプラットフォームを提供する米Sierra.aiのブラッド・テイラー氏によると、今のところAIエージェントは以下の3種類があるという。

  1. パーソナルエージェント
  2. 特化型エージェント
  3. カンパニーエージェント

 (1)のパーソナルエージェントは、メールの返事、休暇の計画、ミーティングの準備などをしてくれる秘書のようなAIだ。パーソナルエージェントの領域では、Apple、Googleのようなスマートフォンを持つ企業に加え、OpenAIなどのAI大手、それにスマートグラス(メガネ)を持つMetaなどが覇権争いに乗り出している。

 今後は個人のプライベートな情報なども取り込み、より便利になっていくものと見られる。一方で、そうしたプライベートな情報を持つシステムの統合はなかなか困難であり、そうした情報をうまく統合する論理的思考能力も必要になる。日本企業にはなかなか手が出せない領域だ。

 (2)の特化型エージェントは、特定の専門領域に特化したAIだ。米国では法務分野に特化したHarveyや、プログラミングに特化したDevinなどの先行事例がある。日本国内では、企業の投資家向け情報の管理やサポートを行うエクサウィザーズの「IRアシスタント」や、同じく営業トークの練習をサポートする「exaBaseロープレ」なども、特化型エージェントの原型といえる。

 特化型エージェントは、狭いタスク領域での深いシステム統合が必要になる。技術とドメインの両方の知識が必要だが、今後いろいろな領域で新しい特化型エージェントが台頭してきそうだ。

 (3)のカンパニーエージェントは、企業が自社の情報やサービスに関する問い合わせに対応するために導入するAIエージェントを指す。これにより、顧客や従業員からの質問に24時間対応でき、業務効率の向上や顧客満足度の向上が期待されている。テイラー氏によると、自社サイトを持つのが当たり前のように、会社のことなら何でも答えてくれる自社エージェントを持つのが当たり前になるという。

 OpenAIのサム・アルトマン氏は、AIエージェントはこの3つの形からさらに進化するという。同氏は「まだ誰もエージェントの本当のすごさを実感していない」と言う。

 同氏によると、多くの人が考えているエージェントは、例えばユーザーに代わってレストランの予約をしてくれる、というようなものだという。しかし、同氏が考えるエージェントとは例えば、300店以上のレストランに電話して、最もいいレストランを予約してくれるようなもの。電話を受ける側もエージェントになれば、店側にとっても迷惑ではない。

 「非常に優秀で経験豊富な同僚のように仕事をこなすエージェントが出てくるように思う。2日かかる仕事や2週間かかる仕事に取り組んでくれて、ときどき質問してくるけど、あとは籠(こも)って仕事をして、すばらしい結果を出してくれるようなエージェント。そんなエージェントができればおもしろいと思う」と同氏は語っている。

 つまり人間にはできないこと、人間はしたくないようなことを代わりにやってくれるというのが、同氏の考えるエージェントのようだ。

 「自分ですれば1カ月もかかりそうな作業をエージェントに頼めば1時間でやってくれるようになる。そのうち一度に10個のエージェントに仕事を任せるようになり、最後には一度に1000個のエージェントに仕事を任せるようになる。2030年ごろには、そうした仕事の仕方が当たり前になり、『そういえば人間って昔は、大変な作業量の仕事を何年もかけて自分でやってたんだよね。今ならAIが1時間でやってくれるのにね』と話すようになる」とアルトマン氏は言う。

 2030年まであと5年。仕事の仕方はそんなふうに大きく変わるのだろうか。

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「AIエージェントがもたらす未来の仕事のかたち」(2024年11月7日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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