「103万円の壁」を壊すための私案(1/4 ページ)

» 2024年11月27日 08時00分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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日沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。


 今般の総選挙でキャスティングボードを握った国民民主党は、103万円の壁の見直しを恒久措置とするため、基礎控除などの非課税枠を178万円まで引き上げるよう主張している。しかしこれを全国民に一律に適用すると、8兆円規模の税収が失われる可能性があるという(複数のメディアや研究機関による試算)。

 確かに基礎控除などを一律引き上げることで、GDP押し上げ効果は非常に大きいものになるが(※)、その一方で、ただでさえ恒常的な赤字が続いている上に防衛費や社会保障などで今後膨らむことが目に見えているわが国の財政赤字はさらに悪化してしまう。これを「バラマキ策」と呼ばずして何をそう呼ぼう。

(※)野村総研の木内エグゼクティブ・エコノミストの試算では年間1.68兆円になる。

 国際的に突出している我が国の公的債務残高(国債の発行残高は約1000兆円、地方債の発行残高は約200兆円)はさらに悪化するだろう。これは次世代への「つけの先送り」のさらなる増額を意味するものだ。

 しかも基礎控除等の一律引き上げは、低所得者層への恩恵よりも(税率が高い)高額所得者にとって圧倒的に大きな恩恵をもたらすものなので、社会的公平性の観点からいっても望ましい政策ではない。玉木代表の主張は、「労働者の味方だ」といいながら富裕層向けの大型減税をもくろむトランプ次期米大統領のやり口を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 たぶん、与党は今後の国民民主党との協議において、「年収178万円以下の低所得層に限定」した基礎控除などの引き上げを実施する方向で妥協策を打ち出し、その辺りで政治的決着を見ることになろう(国民民主党には「ガソリン税のトリガー条件凍結解除の件でも悪いようにしないからさ」などと言い含めるのだろう)。

 しかしながらこの方法は、次は178万円手前に年収が近づいた人が「働き控え」を起こすだけという「一時逃れ」に過ぎず、本質的な解決法ではない。

 ゆえに以下に、(多分、この数年で政府に採用されるとは思わないが)本質的な解決法の私案を提示したい。

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