冒頭でも触れた通り、晴れ風は上方修正後の年間販売目標も達成を見込んでいる。
歳暮ギフトセットについても好調だ。新商品のため、社内からは「一番搾りとセットになった詰め合わせのみにすべき」という声もあったが、晴れ風単品での販売も行っている。ギフトセットは、購入者も「失敗したくない」という心理が働くため新商品は選ばれにくい傾向があるが、晴れ風については単品でも売れている。
なぜここまで好調なのか。向井氏は要因として(1)味わい、(2)「晴れ風ACTION」、(3)断続的なコミュニケーション展開の3点を挙げた。
味わいについては、晴れ風の特徴である「ビールとしてのうまみや飲みごたえ」がありながら「飲みやすい」新しいおいしさが評価されている。ビールを普段飲む人はもちろん、近年ビール類を飲んでいなかった人からの購入も多いようだ。
「新商品なので初回は気になって購入してもらえても、味わいが受け入れられなければ、リピート購入にはつながらない。晴れ風はビールをあまり飲まない層のリピート率も高いことが分かってきた。また、年代にかかわらず最近ビール以外を楽しんでいた人にも手にとってもらっている」
2つ目の晴れ風ACTIONとは、「ビールを飲む喜びを広げてくれた『日本の風物詩』を守り、そこに集まる人々の笑顔を未来につなげていきたい」といった思いから、晴れ風の売り上げの一部を活用して、継承の危機にある地域の桜や花火などへ恩返しする活動のことだ。
晴れ風を購入すると350ミリリットル1缶につき0.5円、500ミリリットル1缶につき0.8円が自動的に寄付される。缶の裏に印字されたQRコードから専用サイトにアクセスすると、1日1回0.5円分の「晴れ風コイン」が無料で付与され、応援したい自治体を選んで寄付できる。
晴れ風のプロジェクト推進には20〜30代の若手社員を抜てきしており、キリンビール社員としてのDNAを持ちつつも、発想がまだ凝り固まっていない点を期待した。晴れ風ACTIONについては「開発途中でおいしさ以外にどのような価値を提供できるか検討し、調査も踏まえながら決定した」そうだ。
こうした取り組みはSNSでも反響があり、「桜を守る活動を応援したい」「毎日楽しく参加している」など好意的な声が多数届いたという。ビール自体の味に興味がなかった人にも、新しい体験価値を提供できた。と、一定の手応えを感じているようだ。
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