この記事は、関根雅泰氏の著書『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
突然ですが、新しく職場に入ってきた人が困ることって何だと思いますか。
覚えることが多い、今までとやり方が違う、専門用語についていけない、職場にいる人の顔と名前が一致しないなどあるでしょう。その中でも新人が一番困るのは、「することがない」という状態です。仕事ができないので、何か教えてもらわないと、あるいは彼らのレベルでもできる仕事を与えてもらわないと、何もすることがなくなってしまいます。
私たち教える側も忙しいですから、新人ばかりにかまっていられません。かといって、新人に何も指導しないというわけにもいきません。そこで、つい「マニュアルを読んでおいて」と放置状態にしてしまうことがあるのです。指導者にそう指示された新人は、言われた通り机に向かってマニュアルを読みはじめます。いえ、正しい言い方をすれば、マニュアルを広げて眺めはじめます。
本人の気持ちとしては、「自分だけ仕事ができずに申し訳ない」「周りの人に悪い」と思いながらも、できることがないので、申し訳なさと焦りで頭がいっぱいになってしまいます。こんな心理状態で、マニュアルの内容が頭に入ってくるわけがありません。マニュアルのページをなんとなくめくるだけで、手持ち無沙汰な状態が続きます。
ある新人は、「やることがないので、仕方ないからメールを見ているふりをしたり、オフィスのゴミや書類を片付けるふりをしていました。エクセル入力でも何でもいいから、仕事をもらえたらありがたかったです」ということを話していました。
こういう手持ち無沙汰な状態では、いつまでたっても職場になじむことができません。何もすることがなければ、その場に「参加」することはできないからです。新人が職場に参加し、適応するためには「役割の認識」が必要になります。
「役割の認識」とは、自分が職場に来て何をすればいいのか、いちいち言われなくても分かっているという状態であり、こういう状態を作れるよう手助けすることが、私たち教える側には求められます。
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