熊本の廃校が「世界最先端のビジネススクール」に 異色スタートアップの、故郷への思いと緻密な戦略(2/5 ページ)

» 2025年01月05日 08時00分 公開
[大久保崇ITmedia]

「都会では作れない」イノベーション拠点

 ハーバード大学時代、中原氏が頻繁に通っていたのが「Harvard Innovation Labs」だ。新産業創出と社会課題解決を目指す起業家支援施設として2011年に設立されたこの施設で、多様な分野の学生たちが集い、新たなアイデアを生み出していく様子に強く心をひかれた。

 「Harvard Innovation Labsでの経験を山鹿でも再現できると思った」と中原氏は語る。東京では土地も建物も高額で実現は難しいが、山鹿なら広大な土地と建物を比較的安価で取得できる。「5200万円で1万坪の土地と3000平米の建物。これは都会では考えられない規模感です」(中原氏)

オープニングイベント時の様子

 だが廃校の取得は決して平たんな道のりではなかった。当初は賃貸を想定していた中原氏だが、13校もの廃校を抱える市側から買い取り前提での話が進む。数千万円規模の取得費用が必要と分かり、借り入れなども考慮し、2022年7月にやまがBASE株式会社を設立した。

山鹿市に問い合わせるところからオープンに至るまで

 2023年1月から交付金の申請を開始し、プロポーザル型の公募への応募、市議会での承認、地域住民への説明など、一つ一つのステップを丁寧に進めた。同年7月に廃校の取得が実現し、10月には改修工事に着工。2024年4月のオープンに至った。「準備期間は長かったものの、取得が決まってからの動きは急ピッチでした」と中原氏は振り返る。

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