最新作である『真・三國無双ORIGINS』は、シリーズの伝統を守りながら新世代のゲーマーをひきつける要素を盛り込んでいる。注目すべきは、現代のゲームトレンドと過去作要素の融合だ。
過去の試みとして上述した2つの要素、「一騎打ちシステム」と「立志モード」は最新作で時を越えて実装されている。特に「一騎討ちシステム」は、パリィ(相手の武器を弾いて防御し、カウンター攻撃などにつなげる要素)やシールド破壊といった新要素を加えて復活している。
特に、パリィはフロムソフトウェア(東京都新宿区)の名作『デモンズソウル』をはじめとしたソウルシリーズ、米サッカーパンチプロダクションズの『ゴースト・オブ・ツシマ』、またコーエーテクモ社作品である『仁王』にも実装されている。これらは、近年のソロアクションゲームで人気の要素でもある。
『真・三國無双 ORIGINS』のメインモードは、架空の武将を主人公として、三国志の世界を生きる物語を展開する形態である。これは、過去作でサブモードにもかかわらず人気を博した「立志モード」のDNAを受け継いでいる。
プレーヤーの選択によって物語に分岐が生まれながらストーリーを進める形態もまた、近年のアクションRPGの主流の一つといえるだろう。
メインモードに関して特筆すべきは、この「固定された主人公から見た三国志」という試みが、過去作品のストーリーモードで抱えていた課題の解決に繋がっていることだ。これまでのストーリーモードでは、武将ごと、あるいは勢力ごとの視点で別れていた。当然、ストーリーの数は膨大となる上、三国志の時代の一部を切り出したストーリー、という形態も少なくなかった。本作では黄巾の乱に始まり、所属勢力を変えつつも大河ドラマのような「一本のストーリー」として三国志の時代を体験できる仕組みとなっている。
過去作品で実装されたものの、後継作品に継承されなかったこれらの要素が、最新のゲームトレンドを取り入れ復活したことは興味深い。この取り組みは、プレーヤーたちにどのような影響を及ぼすだろうか。
『真・三國無双 ORIGINS』の構成や追加された要素を見るに、30〜40代が中心の既存ファン層に加えて、20代以下のより若く近年のアクションゲームをプレーしている層の獲得も見越しているだろう。
選択型のストーリー展開や、個人の物語に重点を置いた没入型の体験、ボスのアクションを観察し適切な対応を行う類の要素は、現代のゲーマーの嗜好に合わせた進化といえる。
しかし、それは単なる長寿コンテンツの「モダナイズ」にはとどまらないはずだ。プレーヤーが追体験するのは、(フィクションかつエンタメに特化したとはいえ)「三国志」であり、歴史への関心を自然と喚起するだろう。
また、過去作では所謂お笑い枠・ネタ枠とも言われた武将たちに対し、「一本のストーリー」の登場人物になるにあたり大きく「キャラ変」を行っている点も見過ごせない。
特に序盤で登場する張角、董卓についてはキャラクター性が大きく変えられている。張角は困窮する人々を憂い理想と現実の差に葛藤しつつ蜂起した指導者として、董卓は狡猾且つ強かな武人として、過去作とは様変わりした描かれ方をされている。他の武将も同様に、例えるなら歴史ドラマのような、登場人物個々の魅力を引き立てる仕立てとなっている点は、本作で特筆するべき点である。
何より、シリーズの根幹である「無双アクション」は健在だ。数百、数千の敵をなぎ倒す爽快感や戦場における一騎当千の活躍など、「無双」というジャンルを確立した要素は着実に継承されている。このバランスこそが、新世代を魅了しつつ歴史への興味を育む鍵となる。
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