令和の米騒動で外食の「お代わり無料」が危機に? 対応分かれる各社の現状長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2025年01月31日 10時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。


 米の価格が2024年夏から高止まりしている。秋口には新米が流通するようになり、農林水産省によれば全国的に水稲の作況指数は101だった。特段の不作でもなかったことから落ち着くと見られたが、一向に落ちる気配がない。

外食チェーンの「お代わり無料」はどうなる?(画像:ゲッティイメージズ)

 年間契約を結んで一般家庭よりも安く米を調達できていた外食各社は、更新時に価格上昇を受け入れざるを得ず、経営に響いてきている。天丼「てんや」、とんかつ「平田牧場」のように、お代わり無料サービスを取り止める動きも一部で出てきた。

 一方で「とんかつ 和幸」「やよい軒」「吉野家」「松のや」「宮本むなし」など、従来と変わらずご飯お代わり無料を続けているチェーンも多い。苦しみながら、いったんは歯を食いしばって耐えている、というのが実情だろう。

 1月24日には、江藤拓農林水産大臣が備蓄米を条件付きで放出する計画があると明かした。まだ決定ではないが、価格安定のために備蓄米を活用するのは初の試みであり、実現に至るのか、注目だ。

 そうした中、各社のご飯お代わり無料はどうなっていくのか、取材した。

令和の「米騒動」、平成超えの価格高騰

 農林水産省によれば、米の値段が上がったのは、2024年8月8日に発生した地震で気象庁が初となる「南海トラフ臨時情報」(巨大地震注意)を発表したのが一つのきっかけ。災害に備えて主食である米のパニック買いが起こり、スーパーなどの店頭から米がなくなる現象が起こった。それ以来、品不足によって、米の価格の高騰が起こっているとのことだ。

 農林水産省がまとめた「相対取引の推移」によると、2023年度における1等米の年度平均価格は、1万5315円/60キロ。過去のデータを参照すると、やや高めの水準だが突出して高いわけではない。

 上昇を見せたのは2024年8月だ。同年7月から3%ほどの上昇を見せた。やはり、南海トラフ臨時情報によって、消費者が米を買いに走った影響と見られる。さらに激しいのは2024年度(2024年9月〜2025年8月)に入ってからだ。

 2024年9月は、過去最高となる2万2700円でスタート。以降も上昇を続けており9〜12月の平均価格は2万3715円。2023年度平均の1.5倍以上だ。出荷業者と卸売業者などとの取引価格としては、比較可能な1990年以降で過去最高となっていて、なお上昇しているのが現状である。農林水産省や全農によれば、スーパーや外食などが農家と直接交渉するケースが増え、農協に納める米が減っているという。

 米は決して全国的に不作ではなく、需給バランスは取れているはず。減反政策も2018年に取り止めており、直接の原因ではない。

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