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注目すべき7つの「AIエージェント」 50万人以上のユーザーが使うツールも

» 2025年02月06日 08時30分 公開
[湯川鶴章、エクサウィザーズ AI新聞編集長]
ExaWizards

 AI技術の進展とともに、AIエージェントは多様な業界や分野で革新をもたらしています。本コラムでは、注目すべき7つの事例(Reducto、Trellis、Multion.ai、tennr、HappyRobot、DataSnipper、Parcha)を取り上げます。

 現時点では、特定の作業において処理を高度化したり、特定の業界や業務の専門性を高めるために活用したりするケースが多いです。それぞれの特徴を解説していきます。

注目すべき7つのAIエージェントを解説(画像:ゲッティイメージズより)

Reducto

 Reductoは、データ抽出に特化したAIエージェントです。複数のビジョンモデルをトレーニングすることで、枠のない表からでも正確にデータを抽出する能力を持ちます。競合モデルと比較して10倍の速度を達成し、精度も30%向上しています。この性能の高さにより、法律、医療、金融といった多様な分野での活用が進んでいます。

 さらに、Reductoは7桁の年間定期収益(ARR)を達成し、シードラウンドで840万ドルを調達するなど、ビジネス面でも成功を収めています。

 特徴としては、以下があります。

  • 高度なデータ抽出能力
  • 競合他社比10倍の処理速度と30%の精度向上
  • 多分野での活用可能性

Trellis

 Trellisは、非構造化データをSQL(データベースを操作するためのデータベース言語)準拠のテーブルに変換するAIエージェントです。自然言語で定義したスキーマを使用することで、財務文書、契約書、電子メールなどの複雑なデータソースにもSQLクエリを実行可能にします。これにより、データ分析や管理が効率化され、多くのビジネスプロセスに革新をもたらします。

 特徴としては、以下があります。

  • 非構造化データをSQLテーブルに変換
  • 自然言語スキーマの活用
  • 財務文書や契約書など、複雑なデータソースへの対応(参考動画

Multion.ai

 Multion.aiは、Web上でタスクを完了するAIエージェントです。自然言語での指示に基づいて動作し、サイト上に簡単にチャットボットを設置することが可能です。Chrome拡張機能として利用できるだけでなく、APIを通じて開発者が独自のアプリケーションに統合することもできます。

 特徴としては、以下があります。

  • 自然言語指示に基づくタスクの自動化
  • サイトへの簡単なチャットボット設置
  • Chrome拡張機能とAPIを通じた柔軟な利用方法

tennr

 tennrは、医療事務に特化したAIエージェントです。医療機関の紹介フローを自動化し、紹介状やファックスからデータを抽出して事実関係を確認します。その後、抽出したデータを既存の医療系ビジネスソフトに入力することで、手作業の負担を軽減し、業務効率を向上させます。

 さらに、同社の独自モデル「RaeLM™」は400万以上の医療文書を学習しており、高度な精度での処理が可能です。2024年にはシリーズBで3700万ドルを調達し、研究開発や営業チームの拡大を計画しています。

 特徴としては、以下があります。

  • 医療文書からのデータ抽出と自動入力
  • 既存の医療システムとの統合
  • 紹介フローの効率化とエラー削減

HappyRobot

 HappyRobotは、物流業界向けに設計されたAI音声アシスタントを提供するプラットフォームです。これらのAIワーカーは、電話やメールなどのコミュニケーションを自動化し、業務効率を向上させます。具体的には、キャリアセールスやチェックコールなどの物流特有のタスクに対応するよう、実際の通話データセットを用いてモデルを最適化しています。

 特徴としては、以下があります。

  • 自然な会話の実現:フィラーや自然な間を取り入れ、人間らしい音声応答を提供
  • スケーラビリティ:需要に応じて迅速に対応し、業務の中断やボトルネックを回避
  • リアルタイムのパフォーマンス監視:システムのパフォーマンスをリアルタイムで監視し、ボトルネックに対応

 HappyRobotのAIワーカーは、物流業界におけるコミュニケーションの自動化を推進し、業務の効率化とスケーラビリティの向上に寄与しています。

DataSnipper

 DataSnipperは、監査や金融業務におけるドキュメント処理を効率化するツールです。スプレッドシートやPDFから必要なデータを自動的に抽出し、分析を行います。特に会計監査や税務において高い効果を発揮します。

 オランダ発のAIスタートアップで、Deloitte、KPMG、Ernst & Young、PwCなどの大手監査法人を含む世界125カ国以上で50万人以上のユーザーが利用しています。

 2024年2月にはシリーズBの資金調達ラウンドで1億ドルを調達し、企業評価額が10億ドルに達しました。また、請求書や銀行取引明細書などの資料から情報を自動的に抽出・照合・検証することで、最大90%の単純作業を自動化しています。さらに、東京オフィスの開設や人材採用も進めています。

 特徴としては、以下があります。

  • データ抽出とクロスリファレンス機能
  • 監査プロセスを効率化
  • 複雑なデータの視覚化サポート
  • 最大90%の単純作業の自動化
  • グローバルな展開と日本市場への進出

Parcha

 Parchaは、金融機関向けにKYC(Know Your Customer)およびKYB(Know Your Business)プロセスを自動化するAIプラットフォームです。

 約3分でコンプライアンスチェックを完了し、顧客のオンボーディングを迅速化します。書類の検証やリスク評価を行い、カスタマイズ可能なワークフローでスケーラブルな業務効率化を実現します。

 特徴としては、以下があります。

  • 書類の自動検証と翻訳
  • リスク評価と制裁リストのスクリーニング
  • オンボーディングプロセスの迅速化とコスト削減

まとめ

 特定の業界に特化したHappyRobotやParchaのような垂直型エージェントから、ReductoやTrellisのような幅広い業界で利用可能な水平型エージェントまで、これらのAIエージェントはビジネスの在り方を大きく変えつつあります。

 各分野での応用事例が増える中で、今後はさらに多くの業界がAIの恩恵を受けることが期待されます。社会や産業構造そのものを進化させる可能性を秘めたこれらのエージェントは、私たちの未来を切り拓く重要な鍵となるでしょう。

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「業界を変革する7つのAIエージェント」(2025年1月15日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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