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入社5〜7年目の若手が辞める「3つの症例」 次世代を担う人材を育てるには?Z世代の若手社員の離職を防ぐマネジメント(1/2 ページ)

» 2025年03月07日 05時00分 公開

 「このまま働いて、管理職を目指すのがいいのだろうか」「30代になると転職は難しくなる。今が、ラストチャンスなのではないか」

 入社5〜7年目は自律的に仕事ができるようになり、ある程度の責任を負い、役割を任せられる時期だ。同時に、管理職候補としてキャリアの選択を迫られやすい時期でもある。しかしながら、昨今は素直に「管理職になりたい」と考えている若手社員は多くない。このまま、この会社で働き続けるのか、新たな可能性を探るのかで悩み、「ギアチェンジ」ができずに立ち止まっているのが、5〜7年目によく見られる状態だ。思案を重ねた結果、転職を選択する若手社員も少なくない。

 筆者は、入社5〜7年目を「ギアチェンジ期」と定義している。ギアチェンジ期の若手社員の離職防止を図るためには、ギアチェンジを妨げる3つの「不安」の正体を認識しておく必要がある。

photo ギアチェンジを妨げる3つの「不安」の正体とは?(写真提供:ゲッティイメージズ)

入社5〜7年目(ギアチェンジ期)の特徴とは?

Management不安

 管理職のキャリアパスが見えているものの、管理職としてのさらなる会社へのコミットに不安を覚えている状態だ。現場の最前線で働くことにやりがいを感じている若手社員は多いが、管理職になると、それまでと同じように仕事をするのは難しくなる。「管理職になっても仕事を楽しめるのだろうか?」といった不安を覚えるのは、ある意味、当然のことだろう。

 また、管理職になると「組織人格」として自社の組織や戦略に一段上のコミットが求められるため、やすやすと転職できなくなる。「本当にこの会社にフルコミットしていいのか?」という疑問が頭をよぎり、キャリアを考え直すようになるのだ。

Governance不安

 一般的に「ガバナンス(Governance)」と言えば企業における統治・管理のことだが、ここで言うガバナンスは個人における管理のことである。仕事でチームを任されるようになると、自由に動ける時間が減り、ワークライフバランスが崩れることが少なくない。ガバナンスがしっかりできていないと、心身ともに疲弊し、「このままで今の生活を続けていけるのか……」といった不安にさいなまれるようになる。

 また、家庭の将来設計も考えなければならない。家族が増えれば必要なお金も増えるが、管理職になってもそれほど給料が上がらない会社もある。他の会社ら魅力的なオファーがあれば、転職を決断する若手社員がいても不思議ではない。

Role-model不安

 組織というものは「感情の集合体」でもあり、自らのキャリアアップのために、「社内政治」に参加しなければならない場合もある。しかし、「自分はそこまでして偉くなりたいのか?」という疑問を抱えている若手社員も多い。こうした若手社員からは、管理職が魅力的に見えていない可能性が高い。

 若手社員にとって、キャリアの理想像となる管理職がいないのは問題だ。管理職になることをイメージする際も、「自分の上司はプライベートを犠牲にしている」「上司は責任を回避して、うまく立ち回っているだけだ」といった断片的なマイナス情報ばかりが目に付くようになる。社内に尊敬できる管理職がいない場合、理想像を他社に見いだすこともあるだろう。このように、社内にロールモデルとなる存在がいないことは、若手社員の定着を妨げる要因になりかねない。

3つの不安への対応策

 ギアチェンジ期は、会社へのコミットメントを一段高める時期だからこそ、不安を覚えやすくなる。「今後もこの会社に身を投じ続けていいのか?」と、就職したときと同じような決断を、あらためて迫られているような状況だといえる。

 ギアチェンジ期の若手社員を定着へと導くためには、見えない将来に不安を感じている状態から脱却させなければいけない。そのためには、擬似的にでも「マネジャーとしての経験」を積んでもらうことが重要になる。筆者は、「Management不安」「Governance不安」「Role-model不安」の頭文字から「MGR経験」と呼んでいる。

 若手社員にMGR経験を積んでもらうため、上司に心掛けていただきたいポイントが以下の3点だ。

役割と権限を与える

 「動かされる側」から「動かす側」になるような役割と権限を与えるのがポイントだ。営業であれば、新人の育成や目標達成について責任の一部を持ってもらうことが考えられる。経理でルーティン作業に追われているメンバーを、業務効率化プロジェクトのリーダーにするのもいいだろう。

 役割と権限を与える際は、チームを持たせることも検討したい。また、擬似的にメンバーを評価する機会を与えるのもおすすめだ。自ら「組織人格」で人を評価することで、あらためて会社の方針や求められる行動が腹落ちするはずだ。

社内ネットワークを広げる

 管理職になると他部署との調整など、これまでとは異なる人間関係が生まれるため、自部署内で人間関係が閉じている人ほど、不安が大きくなる傾向にある。そうならないようにするには、管理職になる前から社内ネットワークを広げておくことが重要だ。

 社内の人間関係は、不安のセーフティネットになる。他部署の管理職や他部署で活躍しているメンバーと部下をつなげるのは、上司の役割の一つである。部門間連携が必要なプロジェクトに部下をアサインしたり、組織横断でリーダー研修を実施したりすることをおすすめしたい。

決断経験を積ませる

 入社時は、誰もが「この会社で頑張ろう」と決断するが、これは個人人格での決断である。ギアチェンジ期の若手社員にとって大切なのは、「組織人格」で決断することだ。

 ビジネスは正解がないものであり、ひとたび決断を下したなら、その決断を正解にするべく努力していくしかない。どんな会社にも、会社のやることなすことに愚痴ばかりこぼしている「評論家」がいるが、若手社員を評論家にしてはいけない。そのためには、自ら決断を下す経験を積ませることが重要になる。部署で責任をとれる範囲の決断であれば、どんどん若手社員に任せてみよう。決断の先には、それを正解にしようと努力する若手社員がいるはずだ。

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