AIやDXに関する教育事業を展開するキカガク(東京都渋谷区)が発表した調査から、製造業におけるDX人材育成の効果的な手法や課題が見えてきた。
調査は、この1年間でDX推進による具体的な成果が出ている大手製造業(年商5000億以上)の役員、管理職(部長・課長相当)、DX推進担当者などを対象に実施した。
現在実施しているDX人材育成研修に関する取り組みとして、最も多かった回答は「eラーニング」(72.8%)だった。以降「実践的なワークショップ」(45.6%)、「座学中心のオフライン集合研修」(40.8%)と続いた。
上記の研修の中で、現場での実践に最も役立っているものとしては「eラーニング」(29.3%)が同様に最多だった。2位は「実践的なワークショップ」(22.2%)、3位「座学中心のオフライン集合研修」(10.1%)という結果に。
キカガクは「DXアセスメント(企業や組織のデジタル化への対応力を評価・可視化するための手法)は研修の実施状況では6位と比較的低い割合だが、現場での実践に役立っている研修では4位にランクアップしている。実施率こそ低いものの効果が高いことを示唆している」とコメントした。
研修での学びを踏まえ、現場ではどのような成果が出ているのか? 最も多かった回答は「従業員のデジタルリテラシー向上」(44.7%)だった。以降「現場主導のDX推進体制の構築」(42.7%)、「基幹システムやビジネスツールの効果的な活用による業務効率の向上」(37.9%)と続いた。
キカガクは「一般的に多くの企業がDX推進によって実現することを掲げる『新たな顧客価値の創造と提供』(23.3%)や『デジタル技術を活用した品質管理体制の構築』(10.7%)などの回答割合は低く、さらに実践的な研修や実業務へのつなぎ込みが重要」と分析している。
効果的なDX人材育成のためには、どのような要素を研修に加える必要があるのか。回答としては「学習者のレベルに合わせた研修内容の選択」(47.6%)、「最適な研修形式の選択(eラーニング/集合研修/ワークショップなど)」「現場の問題解決につながる内容・ワーク設計」(45.6%)などが寄せられた。
研修での学びを現場で活用するにあたっての課題も調査した。最も多かった回答は「個々人の活用意識が不足している」(43.7%)で、以降「全社的なリテラシー不足」(40.8%)、「データ基盤やツール導入などスキルを生かす環境整備ができていない」(33.0%)と続いた。
DX推進のために特に強化したい人材育成については、49.5%が「個々人のデジタル活用意識の向上」と回答した。2位は「より実践的なデジタルスキルの習得強化」(43.7%)、3位は「社内でデジタル活用を指導できる人材の育成」(40.8%)だった。
キカガクは「『個々人の活用意識が不足している』という課題は、インプット中心の研修だけでは人材育成効果が限定的になってしまうことを示している。知識を身に付けることと並行して、ワーク型やプロジェクト型の体験を伴う研修や、成功事例の共有、実際のプロジェクトへのアサインなどが必要。また、DX推進のためには企業が形式的な研修から実践的な活用へとシフトする必要性がある」と指摘している。
調査はこの1年間でDX推進による具体的な成果が出ている大手製造業(年商5000億以上)の役員、管理職(部長・課長相当)、DX推進担当者などを対象にインターネットで実施した。有効回答数は103件、期間は1月8〜14日。
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