なぜ企業は“遊びのプロ”に依頼するのか? ファミリー客を呼び込む「あそび場」の秘密(4/6 ページ)

» 2025年03月17日 09時50分 公開

人口減少が進む地域での導入も加速

 企業だけでなく、自治体との協働事例も増えている。東日本大震災が起きた際には、セブン&アイグループなど民間企業と行政が協力し、室内施設「ペップキッズ」(福島県郡山市)を作った。オープンから4年で延べ100万人が利用し、現在は震災支援という枠を超え、市の子育て支援センターの役割も果たしている。

 また、山梨県甲府市では、子どもの体力低下に危機感を抱いた市長主導で「甲府市子ども屋内運動あそび場 おしろらんど」を2021年4月にオープン。「36の動き」の理論に基づき、甲府市、山梨大学、ボーネルンドの産学官連携で運営している。

photo 「ペップキッズこおりやま」

 あそび場を全国へ展開するには、こうした自治体との連携は欠かせない。ボーネルンドが自社で運営する施設は、人口が密集する都心部での展開が中心にならざるを得ないからだ。

 「政令指定都市レベルでないと、ビジネスモデルの成立しにくい。出生率の減少や対象年齢(3〜5歳)のことを考えると、地方は簡単ではない」(池上氏)

photo 「おしろらんど」

 そこで、地方では自治体が主導して運営を行う。今や70を超える自治体が導入しており、中には人口流出に歯止めをかけるために導入を決める自治体も少なくない。2001年をピークに人口減少が続いている京都府亀岡市もボーネルンドのあそび場を導入し、子育てしやすい町であることをアピールしている。

 「取り組んでいる自治体はたくさんあるが、子どもを預ける場所として認識されており、ボーネルンドの存在や考えがまだ浸透していないのは課題」と池上氏は語る。

 ちなみに、筆者の故郷でもある京都府綾部市にも導入されており、駅前の図書館に併設された施設は多くの家族連れでにぎわっている。子どもが少なくなった町ではあるが、施設内を見ると、久しぶりに活気が感じられた。

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