さて、定量的に比較できるようになったとして、その優劣を点数にどのように反映させるのか、というのが次の論点となります。他の団体の事例でよく見かけるのが、
MUSTで求める時間が60秒であるとして、それよりも短いものを高い評価としたいので、
をWANTとして加点する。
といったように、値の範囲により、相応の点数を付与するというものです。
ただ、この場合は設定した範囲自体が適切なのか、という疑問が残ります。また、値が範囲の境界にある場合に不公平が生じることも無視できません。そこで、私がよく使う方法として、各事業者の平均からの乖離(偏差)で点数を付与するというものがあります。
つまり各事業者の平均の値が常に配点の中間点になる、という考え方です。
計算式は次のとおりです。
例えば、3社の提案で20秒、30秒、50秒という値が出てきたとしましょう。3社の平均秒数は、(20+30+50)/3=33.33秒です。この項目の配点を5点として、上記の計算式に当てはめると、
という点数となります。
この方法は機械的に計算が可能で、値の範囲を気にする必要もありません。各社からの提案の値を予測しなくても審査基準を作成できるので、評価に対する発注者側の恣意性も排除できます。
なお、値が大きなものが優位となる場合の計算式は次のとおりです。
ここまで説明してきたので、すでにお気づきかと思いますが、この計算の考え方は、プロポーザルの価格点の評価にも応用できます。
私がよく見かける他団体の事例では、価格点の計算式を、予算額や予定価格からの乖離で行っているケースがほとんどです。
しかし、限られた1社からの見積もりで予算を組んだなど、予算の根拠となる参考見積もりの取得が適切に行われていない場合、そもそもの予算額や予定価格が適正なのかは疑ってかかるべきでしょう。現在の自治体の調達事務における予算額は水ぶくれしている可能性もあるのです。
そこで、予算額や予定価格によらず、純粋に各事業者間の見積額の比較により優劣を決めることができる、この計算式はもっと活用されてもよいと思います。
次回はプロポーザル評価における、面談審査(プレゼンテーション)の考え方、そしてこれらの評価に生成AIを活用する道筋について考えていきましょう。
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