株主に責められるのに、なぜ? 上場企業が「社会課題解決のための事業」に取り組むワケ

» 2025年03月30日 17時05分 公開
[ITmedia]

 上場企業は一般に、株主から短期的な利益を求められる。そのため社会課題解決などの目的を持つ、中長期の事業を進めづらい。そんな中でも、事業を通じた社会課題解決に取り組む企業の意図とは。日本総合研究所(東京都品川区)が調査した。

株主からは厳しい声も……なぜ、それでもやるのか?

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 事業を通じた社会課題解決について、62.2%が「情報収集」を行っていた。また、「社会課題解決に取り組む企業との戦略的連携」(41.7%)、「CVCやインパクト投資としての活動」(39.4%)に既に取り組んでいる企業も目立つ。

photo 事業を通じた社会課題解決についての取り組み(プレスリリースより)

 事業を通じた社会課題解決に取り組むことで、どのような効果を期待しているのか。「長期的な成長」「企業ブランド・イメージUP」「自社のパーパスや存在意義の具体化」は、いずれも「効果がある」「どちらかといえば効果がある」の合計が9割を超えた。企業はこうした取り組みを、長期的な視点から企業価値を高めるためのものと位置付けていることが伺える。

photo 事業を通じた社会課題解決で、どのような効果を期待しているのか(プレスリリースより)

 事業を通じた社会課題解決に取り組む上での課題として最も多く挙げられたのは、「リソース(ヒト、モノ、カネ、ノウハウなど)不足」(62.0%)だった。また、「社会課題の解決を実現する具体的な事業モデルの構築が難しい」も26.5%に上った。

 取り組みの意義について、社内外のステークホルダーから理解を得ることの難しさも浮き彫りになった。「社会的・環境的インパクトの測定・費用対効果の測定が難しい」(38.8%)という技術的な課題の他、「利益目的事業と同じ時間軸や基準で評価されてしまっている」(18.2%)、「短期的な成果が求められるため、中長期的な視点に立つことが難しい」(16.5%)、「ステークホルダーから利益重視のプレッシャーがある」(10.7%)などコミュニケーション上の課題が複数挙げられている。

photo 事業を通じた社会課題解決における課題(プレスリリースより)

 仕組みや支援の要望として多かったのは「同じように社会課題解決に取り組む企業と取引先や連携先としてマッチングしやすくなる仕組み」(37.0%)、「社会課題解決への取り組みを、社会に広く知らせることができるような仕組み」(35.4%)、「既に事業を通じた社会課題解決に取り組んでいる企業による情報発信(統合報告書での説明など)」(30.7%)だった。

 また、「政府や自治体による、公共調達時の入札での優遇(評価点が追加されるなど)」(26.8%)、「民間金融機関による、金利などの融資条件の優遇」(24.4%)といった、取り組みを推進することによる具体的なメリットを求める傾向も見られた。

 調査は2024年8月2日〜9月6日、日本総合研究所(東京都品川区)が全国の上場企業の経営企画部門、または類する組織を対象に実施し、127社から回答を得た。

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