――その視点は目からウロコですね。ちなみに、今の話に関連しますが、インバウンドが地方に周遊しにくいのには、どういった問題があると思いますか。
二次交通の不備や、ガイド、ランドオペレーター(旅行会社や観光客の依頼を受けてホテルやレストラン、交通等の手配・予約などを受け持つ)の不足など、いろいろな問題がありますが、一番はデジタル上に観光データが整備されていないために「行きたい場所」を探せず、現地にたどり着けないことです。
現在、インバウンドはFIT(個人旅行)が8割以上を占め、彼らは「旅マエ(旅行する前)」や「旅ナカ(旅行中)」にSNSやGoogleマップなどのデジタルツールを駆使して情報を収集しています。駅や観光案内所に紙のパンフレットが置かれていても、現地に来てからでは遅いわけです。来る前にその土地の魅力をデジタルで訴求できるようにしておかないと。
――具体的には、どのあたりのデジタルデータを整備すべきですか。
今さらではありますが、観光協会のWebサイトをスマホ対応にして正確な情報を掲載し、最新化するだけでも十分に効果があります。これからはAI検索が主流になると思われますが、AIとて、情報がそもそも存在していなかったり、情報が誤っていれば正しくアウトプットしてくれませんから。こうした基本中の基本のことが、まだまだできていないのです。
それとSNSの運用も重要です。インバウンドを対象とした「旅マエにもっとも役立つ情報源」を調査した観光庁のデータによれば、SNSが口コミサイトや旅行会社のHPなどを上回って1位になっています。デジタルでの窓口は、今やSNSです。それなのにSNSを活用していない自治体がとても多いのが現状なのです。
さらに「旅ナカ」で使われるツールはGoogleマップですから、お店や観光施設の情報を正確にしたり、質の良い口コミがたくさん付くようにする努力も必要です。
――自治体による情報発信は、ツールだけでなく情報発信の在り方にも改善すべき点がありそうですよね。
その通りです。滋賀県を例に出して恐縮ですが、滋賀をPRするならば、「滋賀・びわ湖に来てください!」と言うよりも、京都と絡めて「京都のすぐ隣です! だけど京都とは違う文化があります」と訴求した方が、PRとして効果的なのは明らかでしょう。自分の自治体単独でPRする必要は全くないのです。
また、京都は観光コンテンツが盛りだくさんですが、「足りていないものは何か?」という視点で見ると、温泉が少ないわけです。
もちろん、嵐山などにはありますが混雑してるし、天橋立など京都府北部まで行けばいい温泉がありますが、電車だと特急で2時間もかかります。
一方、滋賀県には雄琴(おごと)温泉という素晴らしい掛け流しの温泉がありますが、電車で京都駅から5駅、わずか20分で行けてしまうのです。
――なるほど。それならば「京都観光で疲れた人は、滋賀の雄琴温泉へ」と誘客し、これをフックとして周遊してもらえば効果的ですね。
そう。必要なのは、より広域でお金を落としてもらうという視点を持つこと、さらに外から見た自分たちの土地の価値、つまり何で勝負するのかをきちんと見定めることだと思います。
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