「大屋根リング」の東側になぜ芝生があるの? 万博会場デザインの“粋な理由”「次の駅まで」に読めるハナシ(1/2 ページ)

» 2025年04月15日 06時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 万博史上最多となる160以上の国・地域、国際機関が参加する大阪・関西万博。4月13日に開幕し、早くも盛り上がりを見せていますが、会場のシンボルともいえる「大屋根リング」(以下、リング)の大きさにびっくりする人も多いようです。

大阪・関西万博が開幕(編集部撮影、以下同)
会場のシンボルともいえる「大屋根リング」

 世界最大級の木造建築物であるリングの高さは12メートル(外側は20メートル)、幅30メートル、全周は約2キロに及びます。各パビリオンを楽しむには、このリングをくぐる必要があるため、いわばメインストリートといえます。また、リングの上を歩くだけでなく、下には雨風や日差しを遮る機能も備わっています。それにしても、なぜ「木造」なのでしょうか。

 会場デザインプロデューサーの建築家・藤本壮介さんによると、世界的に今、大きなオフィスや集合住宅などを木造でつくる動きがあるそうです。理由は、持続可能な社会を目指しているから。ご存じのとおり、木は二酸化炭素を吸収するので、環境に優しい素材とされています。建築材料として木を切ったあとは、植林して森を再生する。こうした取り組みが行われていますが、日本は少し遅れているそうです。

「貫(ぬき)」と呼ばれる工法で完成

 ただ、日本には1000年以上も木造建築の伝統があって、森林も豊か。そんな日本の環境を生かすために、リングの開発にあたって「伝統と最新のテクノロジーを組み合わせました」と藤本さんは話します。

リングの内側にパビリオンが並ぶ

 例えば、柱と梁(はり)の組み合わせについて。柱に穴が開けられて、梁がそこに通されてくさびで止める――。京都・清水寺の舞台などで使われている「貫(ぬき)」と呼ばれる工法ですが、そのまま使っても現代の建築基準法をクリアできません。というわけで、くさびの部分に金属を使っています。こうした技術はこれまでになかったので、「何度も試験してデータを取ってようやく完成しました」(藤本さん)

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