日本では1on1=本音で話す、と受け止めている人も多いようです。大切なのは本音ではなく、ミッションです。1on1でのミッションとは、「自分がこの会社で、何をするためにいるのか」というアイデンティティーであり、危機を乗り越えるための正義であり、個人が働く上で欠かせない信念です。
このミッションを深化させるのが管理職の仕事であり、骨の髄までミッションが染み込んでいれば、いかなる想定外の危機に遭遇しても「自分のなすべきことは何か」「自分にできることは何か」と、自らの正義に従い即座に行動できます。
キャリアを一つ一つ積み重ねることで、「私は成長している」という実感が深まり、その延長線上に「同じ会社で働き続けるか」「転職するか」という選択が生まれることもあります。キャリアの岐路で「最良の選択」をするためにも、「今、この会社にいる私」のミッションが必要なのです。
もちろん1on1をする過程で、部下から「実は……」と本音を言われることもあるかもしれません。その時は「一人の人間」として、向き合えばいいだけです。上司が「人」として向き合ってくれた経験は、部下のその後のキャリアにとって、確実にプラスに働くでしょう。
私がこれまでインタビューしてきた1000人超のビジネスパーソンの中には、「心の上司」を持っている人たちがいました。彼・彼女らは「あのとき○○さんに助けられた」「あのとき△△さんがいたからふんばれた」「あのとき××さんが言った一言で、私は目が覚めた」などと、“あのときの上司”を語り、自分が上司になったときに「○○さんならどう決断するかな?」と思い浮かべると言っていました。
心の上司は狙ってなれるものではありません。しかし、1on1をそのチャンスにすることは可能です。1on1の在り方に悩んでいる上司は、まず自分の上司との1on1において、「目的とゴールを明確にする」1on1をお願いしてください。それと並行して、会社で1on1トレニーングや教育を取り入れるべきと注文してください。
もちろんその前に「あなた自身」もミッションの具現化をお忘れなく。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。
新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。
「また休むの?」子育て社員に“絶対言えない本音”──周囲が苦しむサポート体制から脱せるか
自ら“窓際社員”になる若者──「静かな退職」が増えるワケ
「育休はなくす、その代わり……」 子なし社員への「不公平対策」が生んだ、予想外の結果
「年功序列=悪」は本当か? 三井住友銀行が堂々と廃止できたワケ
米Amazon、Googleも出社回帰 なぜ、わざわざ脱リモートするのか?
「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング