介護離職者のうち、介護休業や休暇の未利用者は54.7%ーー。そのような結果が東京商工リサーチによる調査で明らかになった。介護離職問題の深刻さが増している中、仕事と介護の両立支援への取り組みはどこまで進んでいるのか。
過去1年間に「育児休暇が発生した」と回答した企業は22.3%だった。企業規模別に見ると、大企業は55.6%、中小企業は21.4%となり、顕著な差が見られた。また、国の定める育児休業とは別に、企業独自の育児支援休暇制度が「ある」と回答した割合は、大企業で52.7%、中小企業で32.2%となり、追加的な支援においても企業規模による差が大きい結果となった。
一方、「介護休暇が発生した」との回答は全体で10.0%であった。規模別では、大企業が26.1%、中小企業が8.7%と、介護においても企業規模による対応状況の格差が際立つ結果となった。
「介護を理由とした退職の発生」は7.3%だった。規模別で見ると、大企業は12.0%、中小企業は7.0%となった。また、介護を理由に離職した人のうち、介護休業や介護休暇を利用しなかった割合は54.7%に上った。制度の認識不足や制度利用が難しいケースも多いと考えられる。
仕事と介護の両立支援への取り組みや整備した制度について、最も多い回答は「就業規則やマニュアルで明文化」となり、全体では50.2%に上った。規模別で見ると、大企業は73.4%と7割を超えた一方で、中小企業は48.2%と半数に届かなかった。また、「取り組みや整備した制度はない」という回答は、大企業では9.7%に留まった一方、中小企業では30.0%に達した。
両立支援について、会社の取り組みは「十分だと思う」という回答は19.8%にとどまった。規模別で見ても、大企業と中小企業の間に回答差は見られなかった。両立支援におけるハードルについては企業規模によって差がある一方で、取り組みを十分とする回答割合に差がないことから、目標点に相違があると考えられる。
十分と思わない理由については、「代替要員を確保しにくい」が最も多く62.6%。また、大企業は「職場の雰囲気」が18.8%と、中小企業より12.5ポイント高かった。その他、「介護休業が社員に浸透していない」という回答は、大企業では37.0%、中小企業では24.6%となり、浸透への意識付けに違いがあると見られる。また、中小企業は「自社に前例が少ない」が50.5%と半数に上った。
介護休業で取得できる93日間についてどう感じるか。全体では「短い」が34.4%、「長い」が33.5%、「ちょうど良い」が32.0%と均衡した。一方で、中小企業では35.0%が「長い」と回答。大企業よりも20ポイント近く高い結果に。企業規模によって、受け止め方に大きな温度差があることが明らかとなった。
回答した人からは「93日でどうこうできる問題ではない」「家族のために動く人間に制限を持たせること自体が異常。会社は人がいて初めて成り立つ存在であるため制限ではなく、介護しつつも働けて給料も変わらない制度作りが必要」「介護の場合、『毎週〇曜日で1年間』『毎日、10時からの勤務』『隔日4時までの勤務』などの柔軟性が必要で、日数で縛る意味がない」などの意見が寄せられた。
調査は2025年4月1〜8日にインターネットで実施。有効回答5570社を集計・分析した。
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