昨今「管理職になりたくない」「管理職にならない方がお得だ」――という意見が多く挙がっている。管理職にならず、現状のポジションを維持したいと考えているビジネスパーソンが増えているが、管理職登用を「辞退」するのは悪いことなのだろうか……?
社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所の和賀成哉氏が、管理職登用を辞退するうえで気を付けるべきポイントを解説する。
Q:管理職になりたくない中年層が増加しています。私もその一人で「管理職は責任が重いのに給与が伴っていない」と考えています。管理職になることを断り、ずっと今のポジションにいたいと主張することは、悪いことなのでしょうか?
A:管理職になりたくない理由を明確に伝えて辞退することは、悪いことではありません。ただし、辞退するとその後の昇進が難しくなる可能性もあります。
また、もしかしたら「管理職は責任が重いのに給与が伴っていない」と思い込んでいるだけかもしれませんので、会社の制度を理解し、納得したうえで選択するようにしてください。
日本では「管理職になりたくない」という人が圧倒的に多いです。パーソル総合研究所が2022年に実施した調査では、日本で管理職になりたい人はたったの19.8%で、調査対象地域の中で最も低い数値だというデータが出ています。
管理職になりたくない理由は、主に以下のものがあります。
- マネジメントなどの仕事量が増える
- 責任をこれ以上負いたくない
- 給与が責任に見合わない(一時的に下がるケースも)
- 管理職に向いていないと感じる(自信がない)
- 現在の仕事内容と給与に満足
- 仕事と家庭の両立に不安がある
- プライベートの時間を優先したい
ここで、労働基準法第41条第2号に定める管理監督者(以下、「労基法上の管理職」という)と、会社が定める管理職の違いについて触れておきます。
労基法上の管理職は、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、労働時間などの規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な職務内容を有していること――とされています。その職務の重要性から、一般職と比較して相応の待遇がなされていることなどを条件に、労基法で定める労働時間、休憩、休日が適用除外となっています。
つまり、残業代を支給しなくても問題ないということです。もちろん、深夜時間帯に勤務した場合の割増賃金は、労基法上の管理職でも支給しなければなりません。
一方、会社で定める管理職は、労基法上の管理職と同様である必要はありません。多くの会社では「課長」から管理職としています。しかし労基法上の管理職は「部長」からで「課長」には残業代を支給するとしています。自社の制度を確認しておくとよいでしょう。
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