5月12日、第一三共はグローバル共通の新しい人事制度を導入すると発表した。同社は、2025年度目標として「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」となることを掲げている。
奥澤宏幸社長は記者発表会で「がん事業の急速な拡大により、当社はかつてないスピードでグローバル化が進んでいる。グローバル人材が当社に集まり始めた今だからこそ、新しい人事制度を導入する意義がある」と説明した。
グローバル共通の新人事制度を導入するに当たり、第一三共はジョブ型人材マネジメントに移行する。これまでのメンバーシップ型の要素も残す方針で、人事部長の徳本明宏氏は「製薬業界は環境変化が早く、強化すべき事業やテーマが変わるスピードに対応する必要がある。社員の専門性を強化するためにも、会社主導のローテーションや異動もある」とした。
新人事制度の主な軸は、評価制度、等級制度、報酬制度の3つ。評価制度では、社員の能力やモチベーションを引き出すことで目標達成に向けて、主体的に行動することを促し、個人のパフォーマンスを最大するマネジメント手法を採用する。「社員それぞれのパフォーマンスが向上することで、組織や会社の成長にもつながる」(徳本氏)
目標設定にはストレッチ目標を導入し、会社業績とも連動させる。評価方法は総合評価を廃止し、絶対評価を採用。また、日常的に上司・部下との1on1ミーティングや、同僚からの多方面フィードバックを実施する。
等級制度は、職務の特性(職種)と職務の難易度(職責など)に応じた等級を、グローバル共通で体系化する。キャリアの全体像の可視化や公正な評価を目指した。これまでの年功的な運用を全廃し、年齢や勤続年数を問わず、職務や職責の大きさを軸とする等級運用とする。徳本氏によると「第一三共では従来は幹部職層になれるのは早くて40歳」だったが、新制度では30歳前後で幹部職層になるケースもあるという。
こうした等級体系に応じ、報酬制度も再設計する。初任給の引き上げを実施し、研究職・営業職の場合、大卒は35万円(従来は25万5000円)、修士・学士6年制卒は37万円(同27万9000円)となる。年2回の賞与は、2026年度から夏の年1回支給に変更する。4月から導入した新しい報酬制度では、幹部職層に新しく登用された30代社員の平均年収が約40%増加した。
グローバルでの新人事制度の導入は、評価制度は日本や欧米、タイ、シンガポールで2024年度、それ以外のアジアや中南米では2025年度からを予定している。等級制度と報酬制度は日本や欧米で2025年度から、アジアと中南米では2026年度から導入する。
新人事制度の出来栄えについて、奥澤社長は「現状では80点くらいあげていい」と自信を見せた。一方で残された課題もあるとし、残り20点を埋めるべく、完成形を目指して試行錯誤を重ねるとした。
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