万博で高騰しているとはいえ、大阪のホテル価格は長期的に上昇してきた。大阪府内にあるホテルのADRは、2024年が1万9569円。2021年の2倍以上に膨らんでいる。
過去『出張族が悲鳴! 都内ホテル「1万円の壁」どころか2万円台へ なぜこんなことになるのか』でも解説したが、ホテルは官公庁などが発表する観光客数のデータや、周辺価格に合わせて客室単価を決定する。現在4万円台以上で供給するホテルは、ビジネスホテルの逼迫(ひっぱく)具合を見て強気な設定にしたと思われる。客室の稼働率が100%近くになる施設もあり、まさに売り手市場だ。
大阪府の年間延べ宿泊者数は2019年の約4742万人から2024年は約5645万人と、コロナ禍に減少があったものの現在は過去最高水準になっている。このうち45%を外国人が占める。日本人が依然として多数派だが、東京ではインバウンド向けホテルの価格引き上げが周辺施設の価格を吊り上げており、大阪の相場も同じ構図で上昇したと考えられる。特に英語圏のインバウンドは長期かつハイエンドの客室を選択する傾向があり、価格上昇への影響度が大きい。
高級ホテルも全体平均を引き上げている要因だ。梅田の「ザ・リッツ・カールトン大阪」は現在、平日で1部屋10万円強、休日で15万円以上の価格帯となっている。また、大阪では万博に合わせて高級ホテルの新設が進んだ。2024年8月にオープンした「フォーシーズンズホテル大阪」も平日で10万円強、休日は最低でも15万円以上である。ヒルトン系で4月にオープンしたばかりの「ウォルドーフ・アストリア大阪」も最低ラインは同価格帯だ。
現在の為替レートにおいて、先進国の外国人には日本の物価が1.5〜2倍ほど安く見える。円安が続く限り、ホテルは強気を維持してADRが高い状態は続くはずだ。
ビジネスホテルは国内勢が牙城を築いている一方、高級ホテルでは外資系の進出が相次ぐ。外資系高級ホテルは不動産の所有とホテル運営を分離するMC(管理運営受託)方式の出店が中心だ。デベロッパーがビルを所有し、ホテル企業は運営に専念するため利益率が高い。ビルのブランド向上にもつながるため、デベロッパーは外資系ホテルの誘致を強化している。誘致が進めば、相場の平均価格はさらに上昇していくとみられる。
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