「長期雇用を憎む」経営者 黒字リストラでベテランが去り、最後に笑うのは誰?河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)

» 2025年05月23日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 またもやリストラです。

 しかも、黒字リストラ。コロナ禍前から徐々に増え、アフターコロナを見据えた企業再編で一気に拡大した「今のうちに切っちゃえ的リストラ策」が次々と公表されています。

 東京商工リサーチによると、2025年に入ってから5月15日までに上場企業が募集を発表した早期・希望退職者数は19社で、計8711人(一部は応募人数)。2024年同期間に発表した27社の4654人より87%増えました。19社のうち、直近決算期の最終損益が黒字の企業が6割を占めています。

tora 上場企業 早期・希望退職 推移(東京商工リサーチのプレスリリースより引用)

 日本を代表する企業であるパナソニックHDに至っては、2013年3月期の最終赤字を最後に2025年3月期まで12年連続で黒字です。にもかかわらず、グローバルで約22万8000人いる従業員の4%(国内と海外で5000人ずつ)を、2026年3月期までに削減するそうです。

 同社の楠見雄規社長兼グループ最高経営責任者(CEO)は、5月9日の記者会見で「雇用に手を付けることは、じくじたる思いだ。経営責任は私にある」と話し、2026年3月期に総報酬の40%を返上することも明らかにしました。

松下幸之助氏「1人も解雇するな」の言葉、届かず

 パナソニックの前身である松下電器の創業者であり、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助さんは、「1人も解雇するな、1円も給料を下げるな、目先のことばかりを追っていてはいけない」と言い続けていたのに。いったいなぜ?

 その理由を楠見氏は「人員に余裕がある状態では生産性を高める創意工夫が起きない」と言います。人を減らせば創意工夫が起こる、ということでしょうか。申し訳ないけれど、この理屈が私には全く理解できません。

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