これまで世界中の研究者たちが、リストラの効用に関する研究を行い、分かったことが「リストラは短期的な効果はあるが、長期的なマイナス面の方が大きい」という歴然たる事実です。カネだけみれば短期的な効果は出ますが、長期的には「残された社員」と企業との関係が変わってしまい企業の土台が揺らぎます。
こういった社員の心理的な不安定さは、新しいアイデアの創出やリスクを取る意欲を阻害します。長期的なイノベーションの低下につながる可能性を指摘する研究者は少なくありません。
むろんリストラ発表が、市場にコスト削減への期待感を与え一時的に株価が上昇することもあります。希望退職を実施した企業はそうでない企業に比べて、業績や時価総額が向上しているとの報告もあります(Business Insider Japan 2024年10月29日)。
しかし、企業を支えるのは株主ではありません。自社の社員です。日本企業衰退の根本的な原因は、長期雇用や年功序列そのものではありません。真の問題は「能力発揮の機会」のなさです。人がイキイキと働くために絶対に欠かせない、能力発揮の機会というリソースの欠損が、日本企業最大の問題なのです。
これらの機会が、個人の行動や態度にプラスの影響を与え、やる気のあるモチベーションの高い社員を増やすことにつながります。逆に、機会がないことは、個人の隠された能力が引き出される機会そのものが失われることを意味します。人間には、本能的に「より良く生きたい」「より良い自分になりたい」と思う傾向があるので、機会の欠損は自尊心を低下させ、やる気を奪い、生きるエネルギーさえ奪い去ります。
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