新卒採用の極意 「待遇アピールだけ」ではもう選ばれない

» 2025年05月23日 07時00分 公開

 近年、人手不足により採用における競争環境は激化しており、特に新卒採用では優秀な人材の確保がますます難しくなっています。事業内容や待遇を伝えるだけでは企業の差別化にはつながりません。大事なのは企業が「自分たちは何者なのか」を明確に伝え、学生の共感を生むことです。

 口コミ掲載型の就活生同士のコミュニティサイト「みん就」を運営するみん就(東京都新宿区)代表取締役社長CEO 赤塩勇太が、新卒採用における成功のポイントを紹介します。

新卒採用において事業内容や待遇アピールだけでは企業の差別化につながらない(提供:ポート)

著者プロフィール:赤塩勇太(あかしお ゆうた)

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1989年長野県生まれ。大学在学中より株式会社ソーシャルリクルーティング(現:ポート株式会社)にインターン生として参画し、2013年に新卒入社。

2022年7月に同社執行役員 就職領域COOに就任。2024年4月、みん就株式会社 代表取締役社長CEOに就任。

日本最大級のクチコミ数を誇る新卒就活生向け口コミ情報サイト「みん就」や人材紹介事業を展開。


1. 「自分たちらしさ」 の発信が重要

 新卒採用においては、単に事業内容を伝えるだけでなく、企業の「パーパス」(社会における存在意義)を軸に、企業の独自性=自社らしさを継続的に発信していくことが重要です。

 ここで言う「自社らしさ」とは、企業が意思決定の際に共通して持つ価値観や判断基準を指します。企業のパーパスに共感した社員はエンゲージメントが高まり、ひいては業績向上にも寄与するといわれています。自社の社会における存在意義を明確にし、「自社らしさ」を一貫して伝えることで、学生との適切なマッチングを実現できます。

 一方で、「自社らしさ」が不明確であったり、それを外部に発信していなかったりすると、採用市場においては他社との差別化ができず、「この会社でなければならない理由」が伝わりません。その結果、待遇やネームバリューといった表面的な要素だけでしか競争できなくなります。さらに、自社の価値観や文化に合わない人材が応募してしまうことで、組織の一体感が醸成されず、早期離職につながるケースも少なくありません。

 人材紹介サービス、ポート(東京都新宿区)では、人事課題解決のための支援、コンサルティング事業を展開しています。実際に同社が支援する企業で「自社らしさ」を軸としたインターンシップを構築し、説明会を「自社らしさ」を伝える内容に変更した結果、それまでインターンシップで採用に至らなかった企業が採用に成功したり、選考への移行率や内定承諾率が上がったりするなどの成果が出ています。

2. 大学1年時から関係構築する企業も

 就職活動の早期化が進む中においては、企業が学生と長期的な関係を築くことも重要です。学生は短期間で表面的な判断をしがちですが、長期的に「自社らしさ」を伝えることで、企業の魅力がより深く伝わります。例えば、

  • インターンシップや座談会を通じて継続的に学生との接点を持つこと
  • SNSやブログを活用し、企業のリアルな姿を発信すること

――などの取り組みが有効的です。

 就活の早期化が注目される中、企業と学生の接点づくりも年々早まっています。最近では、早い企業では大学1年生の段階から関係を築こうとする動きが増えている印象です。

3. 学生の価値観に迎合してはいけない

 人材確保のためにワークライフバランスの充実や職場環境の整備は必要ですが、学生に迎合しすぎると企業の本質が伝わりません。企業のパーパスに基づいた「自社らしさ」を伝えながら、そこにひもづく企業のさまざまな制度の意図や背景を明確にし、企業の価値観を理解してもらうことが大切です。

 例えば、フレックスタイム制度やリモートワークの導入については、単なる働きやすさのアピールにとどまらず、「なぜこの制度を取り入れているのか」といった目的や背景を丁寧に説明することが求められます。また、キャリアパスの提示においても、制度の内容だけでなく、「どのような想いでこの仕組みを設けているのか」といった意図を伝えることで、将来の成長イメージを具体的に描いてもらえるようになります。

4. 内定者フォローの強化の重要性

 就職活動の早期化により、内定辞退率が増加傾向にある中、内定を出した時点で採用活動が終わる、とは言い切れません。内定後から入社式までの期間も、学生一人一人と丁寧に向き合うことが重要です。

 内定辞退を防ぐには、学生が企業を "いい会社" だと思うだけでなく、「ここで働くことが自分の未来につながる」 と思わせることが重要です。例えば、

  • 内定者向けワークショップの実施(実際の業務体験を通じて仕事のイメージを明確化)
  • リクルーター制度の導入(現場社員との関係構築を促す)
  • オンライン・オフラインの内定者イベントの開催(価値観を共有し、帰属意識を高める)

――など、内定承諾後も学生と企業との関係性構築に力を入れることが重要です。

まとめ

 新卒採用において成功するためには、一貫して 「自社らしさ を伝え続けること が重要です。そのために以下のポイントを意識しましょう。

1. 企業の「自社らしさ」を明確にし、発信する

2. 学生との接点を増やし、長期的な関係を築く

3. 迎合ではなく、企業の本質を伝える

4. 内定者フォローで「自分事化」を促す

 採用は単なる人数確保ではなく、企業の未来を創るプロセスです。 企業として、学生にとっての最良の選択肢となるための採用戦略を実践しましょう。

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