現代の職場には「弱みを見せず、力強さやスタミナを発揮し、仕事を最優先して競争に勝つことが評価される」といった「強さを競う文化」が根付いている場面が時折見られる。こうした文化の背景には、強さや勇敢さを重視し、弱さを排除して他者との競争に積極的に挑む姿勢、いわゆる「マッチョイズム」と呼ばれる考え方が存在している。
働き方改革などにより日本の雇用慣行が見直されつつある中、ビジネスパーソンはこの「マッチョイズム」をどのように捉えているのか。リクルートマネジメントソリューションズ(東京都港区)が調査を実施した。
なお、本調査では、回答者が特定の偏ったイメージを想起することを避けるため、「マッチョイズム」という表現は用いず、「強さを競う文化」との表記を採用している。
Berdahlら(2018)によるMCC(Masculinity Contest Culture:男性性を競う文化)の4つの特徴を参考に、職場における「強さを競う文化」を具体的な状況に落とし込んだオリジナル項目を作成し実態を調査した。確認的因子分析の結果、「弱みを見せないこと」「力強さやスタミナがあること」「仕事を最優先すること」「競争に勝つことが望ましいとされること」の4要素に加え、探索的に設定した2項目を含む構造が確認された。
職場における「強さを競う文化」の程度について尋ねたところ、「弱みを見せないこと」のうち、「プライベートで困難なことがあっても、職場では平然としていなくてはならない」という項目に対して、67.4%が肯定的に回答した。また、「弱みを見せないこと」「力強さやスタミナがあること」では、いずれの項目においても過半数が肯定的な回答をした。
「強さを競う文化」について、どのように感じているのか。「社員のストレスや精神的負担を増大させる」とした人は71.3%に上った。また、「自社の『強さを競う文化』は過剰だ」は44.8%、「周囲の人は自社の『強さを競う文化』を過剰だと思っているだろう」は43.5%と、半数近くに迫った。
「過剰感がある」とした人を対象に、「強さを競う文化」の4つの特徴のうち、どれを過剰だと感じているか尋ねた。その結果、「仕事を最優先すること」が 22.1%と、最も高かった。
「強さを競う文化」が実際に職場に与える良い影響については、「プレッシャーにさらされることで、メンタルが強くなる。業務への集中力が増す」「日々の意識が変わる」といった「成長」「モチベーションの向上」「パフォーマンスの向上」に関する内容が寄せられた。一方で、全体の過半数は「良い影響はない」とした。
また、悪い影響については、「気持ちが疲れる」「競うことが目的化して、仕事の質が落ちる」といった「疲弊感」「公平性の低下」「パフォーマンスの低下」「多様性の低下」に関する内容が見られた。
「強さを競う文化」の程度(高い/低い)と職場の包摂性(高い/低い)を掛け合わせた4群に分類し、組織および個人の状態を示す6つの結果変数について比較分析を行った。
その結果、「強さを競う文化」の程度が高い職場では、従業員の疲弊感が高まる傾向が明らかになった。一方で、職場の包摂性が低い場合においては、「強さを競う文化」の程度が低い職場ほど離職意向が高まる可能性があることも示された。
同社は「強さを競う文化の程度・包摂性のいずれも低い職場は、実際に退職をしているわけではないが、意図的に仕事を制限し、必要最低限のことしかしない『静かな退職』のような状態になりかねないのかもしれない」とコメントしている。
調査は2月17〜20日にインターネットで実施。従業員規模50人以上の企業で働いている20〜59歳までの正社員を対象とした。有効回答数は933人。
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