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TBSテレビ社長に聞くシェアオフィス整備の狙い 「強いJNN系列」を作るには?11局の東京支社が入居(1/2 ページ)

» 2025年06月11日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 東京・港区赤坂にあるTBS放送センター。その隣に建つビルの15階フロアに5月13日夕方、TBSや系列局、広告代理店などから150人以上の関係者が詰めかけていた。

 この場所の名前は「JNN Park!」。JNNとはTBSをキー局とするニュースネットワーク「ジャパン・ニュース・ネットワーク」のことで、JNN系列局の東京支社が入居できるシェアオフィスとして、TBSテレビが整備した。系列28社のうち、東北から九州・沖縄までの11社が入居して、4月から業務を始めている。

TBS放送センターの隣に建つビルの15階フロアに整備したJNN Park!(以下クレジットのない写真は撮影:志田彩香)

 この日に開かれたのはキックオフ・イベント。訪れた関係者を前に、TBSテレビの龍宝正峰社長が挨拶した。

 「JNNが力を合わせて、ここから新しい一歩を踏み出す。そういう機会をみんなで作ってみました。あらためて強いJNNを作って、一緒に戦っていきたいと思います」

 キー局が直接投資して、系列局のためのオフィスを用意するケースは業界初だ。JNN系列では以前も民間のシェアオフィスに10数局が集まっていたものの、JNN Park!はさらに利便性を高めるとともに、入居した系列局の効率化を図っている。JNN Park!を開設した狙いや背景などについて、TBSテレビの龍宝社長にインタビューした。

龍宝正峰(りゅうほう・まさみね) 株式会社TBSテレビ代表取締役社長・株式会社TBSホールディングス代表取締役副社長。慶應義塾大学卒業後、1987年4月に株式会社東京放送(現株式会社TBSテレビ)入社。2020年7月株式会社TVer代表取締役社長に就任。2024年6月から現職

TBS放送センターの隣に系列局のシェアオフィス 狙いは?

 JNN Park!があるのは赤坂パークビルの15階。総面積は約1000平米で、そのうち約半分の500平米を、JNN系列局11社の東京支社のオフィスが占める。各室とも窓が大きいことから明るく、眺望も良い。各局の営業、報道、編成などの担当者が働いている。

JNN Park!があるのは赤坂パークビルの15階

 JNNの系列局がシェアオフィスに入居する取り組みは、コロナ禍の2021年に始まった。コロナ前は多くの局が東京支社を銀座周辺に構えていたものの、在宅勤務が広がったことで出社人数が減り、広いオフィスを維持する必要がなくなった。そこで、シェアオフィスに集まることで合理化を図るとともに連携を強化しようと、TBSテレビが声をかける形で、同じ赤坂にある民間のシェアオフィスに10数社が入居していた。

 JNN Park!に入居しているのは、以前のシェアオフィスに入居していた局が中心だ。大きな違いは、以前はTBS放送センターまで徒歩で10分近くかかっていたのに対し、隣のビルにあるためすぐに行き来ができること。JNN Park!に入退室するパスで、TBSの社内にも入ることができる。さらに、系列局は初期費用がかからず、家賃を支払うだけで入居できる。

 龍宝社長は、TBSテレビが自ら投資して、JNN Park!を開設した狙いを明かす。

 「基本的な考え方は2021年の頃から変わっていません。JNNの結束を強めたい。そして、勝ち抜いていきたいというのが私たちの考えていることです。JNNを引っ張っていくためにも、こういうものがあった方がいいと思って始めました」

 「ただ、狭かったり、使いにくかったり、TBSテレビからも少し距離がありました。私たちの会社の横にこんなスペースをお借りできるチャンスがあったので、新たに仲間が集まって、一緒にやっていくスペースができることはプラスになると思って進めました」

「ニッポンの“魅力”発信基地」になる

 JNN Park!には、単なるシェアオフィスにとどまらない工夫が随所に施されている。一つは、使いやすさにこだわっていることだ。

 打ち合わせに使える広々としたオープンスペースがあるほか、会議室は収容人数4人の小さなものから15人の大きなものまで5室を備える。会議室は「知床」「白神」「小笠原」「奄美」「西表島」と日本に5つある世界自然遺産からネーミングしていて、象徴的な写真が飾られるなど、部屋ごとに異なる雰囲気の内装にした。

 また、支社室では話しづらい内容のオンライン会議や電話などができる個室ブースを8台用意したほか、席に着いている人には話しかけないルールの集中ブースも6席作った。大容量のポータブルバッテリーを12個常備することで、どこにいても電源を気にすることなくPCなどで仕事ができる。

大容量のポータブルバッテリーを12個常備。どこにいても電源を気にすることなくPCなどで仕事ができる

 もう一つの工夫は、各局があるエリアの魅力を発信する基地になることだ。入居しているのは、北は青森から南は沖縄までの系列局。支社室の入口には、局の略称とともにそれぞれのエリアの名物や名産、象徴となる人物などをイラストにしたオリジナルのサインが掲げられている。

テレビ高知(KUTV)のサインには、鳴子を持った坂本龍馬が描かれている(撮影:田中圭太郎)

 富山エリアのチューリップテレビ(TUT)のサインにはチューリップと立山連峰、愛媛エリアのあいテレビ(ITV)はみかんと瀬戸内海・しまなみ海道、テレビ高知(KUTV)はよさこいを踊るときに使う鳴子を持った坂本龍馬が描かれている。

 JNN Park!にはTBSの担当者も常駐するほか、各局の東京支社には広告代理店をはじめ、行政や観光関係者などさまざまな人が訪れることから、この場所から各エリアの魅力を全国に発信していくことを狙う。

 オフィスの設計や内装は約1年かけて検討された。工事をはじめ、各局のサインやオフィス什器も、すべてTBSテレビの投資によって整備されている。ここまでの投資を決断した理由を龍宝社長が説明する。

 「効果を考えるとやるべき投資ですので、躊躇(ちゅうちょ)しても仕方がありません。多少投資をしても、それを上回る効果が得られれば問題ないと思っています。私たちとしても各局のみなさんとコミュニケーションがしやすくなりました。系列として一体感をもってやっていこうという私たちの考えが、目に見える形で系列局のみなさんにも届くと思うので、一緒に系列を何とかしようとしている姿勢を感じてもらえるのではないでしょうか」

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