JNN系列の地方局は、それぞれが独立した経営になっていて、比較的長い歴史を持つ局も多い。TBSと系列局の関係を、龍宝社長は「パートナー」と表現する。
「放送免許はエリアの免許でしかありません。だからこそ系列というものがあります。エリアの報道をしっかり司っていただいている系列のみなさんと、私たちがタッグを組むことが最も重要だと思っています。エリアごとに強い局がいて、私たちが作るコンテンツをそのエリアでも広げられることが大事ですので、パートナーとしての関係は揺らぐものではないと思っています」
一方で、JNN Park!によって系列局を支援する背景には、地方局の経営環境が厳しくなっていることがある。
「以前は連携をしなくても何とかなっていました。ただ、地方局の経営問題が出てきて、どうやって効率的に会社を運営していくのかを考えたときに、この取り組みは一助になるのではないでしょうか。必要なのは、系列全体としての効率化ですね。まずは東京支社で、一部の局と一緒にやり始めたところです」
TBSテレビではシェアオフィス以外にも、系列局への支援を広げつつある。それは人材交流だ。TBSテレビの社員と系列局の社員がお互いに出向する機会が、報道だけでなくさまざまな部署で増えている。
具体的には、TBSテレビでDXを担当しているイノベーション推進部の社員が系列局に出向して、業務のDXを支援するケースや、系列局の営業系の社員がTBSテレビに出向して、デジタル広告の営業を学ぶケースなどが出てきた。生成AIなどを活用した業務効率化も、TBSテレビで実現できたことを系列局と共有している。
龍宝社長は民放の動画配信サービス「TVer」の社長を務めた。TBSとJNNのニュースサイト「TBS NEWS DIG Powerd by JNN」や、「TVer」などのデジタルコンテンツを収益化することは、キー局以外では難しいのが現状だが、系列局に対して一緒に取り組むことを呼びかけている。
「ローカルニュースを電波で発信できるのはローカル局だけですが、いまは全国にインターネットで情報を発信できるようになったので、そこをさぼると他の人たちに全部取られてしまうだけです。守るだけでは成長しないと思うので、守るところと攻めるところを、しっかり両方持っていないといけないのかなと、系列局には申し上げているところです」
「今まで放送の電波でしか発信できなかったことが、他のツールでもできるようになっているわけですから、こんなチャンスはないですよね。世の中のお役に立てるコンテンツを出すチャンスをいただいていることを肝に銘じて、正しい情報や健全な娯楽を届けられるようにしていく。そのためにもクリエイティブ・ファーストでいくべきだと考えています」
TBSテレビが系列局に対するさまざまな支援を広げていることについて、龍宝社長は「強い仲間を作っていきたい」と思いを語る。
「系列のみなさんのゴールデンタイムの一番重要な時間帯を、私たちのコンテンツで借りているわけですから、各エリアにおいて評価していただけるコンテンツを発信していくことが最大のポイントだと思っています。それはずっとやり続けようと思っています。私たちがそれをしっかり準備できれば、歴史もあって、地元で強い放送局とタッグを組んでいますので、各エリアで強い報道をしてほしいし、地元に密着したサービスを組み立てられるようにしてほしいと思っています」
「そのためにも、このような場所を用意することで、いろいろな知見が共有されます。この局でこういう成功ができたのであればうちでもできるかもしれない、といったきっかけを提供できれば最高だと思います。支援を通して系列の効率化を図って、より足腰の強い企業経営ができるJNNの仲間を作っていきたいというのが一番の思いですね」
系列としての一体感を高めることができるのが、TBSテレビとJNN系列の強みといえる。JNN Park!がつながりを深める場になることは間違いないだろう。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで大学問題、教育、環境、労働、経済、メディア、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・筑摩書房)。HPはhttp://tanakakeitaro.link/
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