慎重すぎる日本人が抱えるリスク 生成AI時代、なぜ「失敗」が必要なのか（3/3 ページ）

[平塚武，ITmedia]

生成AI時代の意思決定ルールを再設計せよ

　最後に、生成AIによって意思決定のルールそのものを再設計する必要性について考えてみましょう。

　AIの進化によって、これまで人間が担ってきた判断業務とAIに任せられる処理との境界線が再構築されつつあります。単に人間の仕事をAIに置き換えるだけでなく、AIと人間の役割分担を最適化するよう意思決定フローを組み直すことが求められています。

　例えばルーチン的な意思決定や大量のデータ分析に基づく判断はAIに任せ、人間は例外対応や戦略的な意思決定に集中するといった形で、「誰が何を決めるか」の新しいルール作りが進み始めています。

　意思決定ルールの再設計とはつまり、組織としての判断プロセスの見直しです。これまで「経験豊富な上司が最終判断を下す」のが当たり前だったかもしれません。しかしAI時代には、「AIが提案→現場が即応→必要なら上司がサポート」というように、よりフラットで迅速な意思決定モデルへ移行することが考えられます。意思決定に関わる人間の階層を減らし、AIのアウトプットを直接業務に組み込むルールへとアップデートすることが、競争優位を生むでしょう。

　私たちは今、組織設計を再考する絶好の機会を迎えています。私たちが考えるべきは、生成AIを「どう使うか」だけでなく、「AIをフル活用できる、軽量な意思決定プロセスと、チャレンジを後押しする組織文化をどう作るか」ということかもしれません。この問いへの答えがまさに、未来の競争力を切り開く鍵となるでしょう。

　生成AIがもたらす決定プロセスの変革は、単なる技術導入の話ではなく、企業文化そのものの変革を伴います。失敗を恐れず高速で学習する組織こそが、生成AIという強力なエンジンを使いこなせるのです。意思決定と組織設計をアップデートし、生成AI時代を勝ち抜く準備を始めましょう。新たな挑戦を厭わない企業にこそ、生成AIは最大の価値をもたらしてくれるはずです。

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平塚武

1980年生まれ。基幹システム開発、データ基盤構築を経て 現在はSalesforce／Data Cloud／Tableau Next／Slack／Snowflakeなどを用いたデータ統合の専門家として活動する Datablazer。「AI／IT を使い倒せる組織を増やす」を掲げ、DX 支援、講演、執筆に従事。スマートニュースでビジネス・システム領域の導入推進をリード後、2023年よりリバネスナレッジ取締役。Xのアカウント