「心理的安全性」と聞いて、皆さんはどのような印象を持つでしょうか。相手へのリスペクトを持ちながら、不安なことやネガティブなことも安心して言い合え、メンバー間の会話が増えて、より結束力が増す……そんな説明をされることが一般的かと思います。
しかし、そんなことを言われても、実現できるイメージがすぐに湧く人は少数派でしょう。コロナ禍も落ち着き、リアルとオンラインが混在する昨今、そんな自由な対話ができる環境を作るのは簡単なことではありません。
少し考えてみてください。「心理的安全性」なんて言葉を使うのは誰か、大抵は組織のリーダーや経営者でしょう。経営にとって、組織にとってメリットがあるから心理的安全性を実現したいというわけです。例えば、以下のようなところでしょうか。
メンバー視点でのメリット
チーム・組織視点でのメリット
こうして並べてみると、「組織の生産性が上がる」というところはもちろんですが、個々人が変な遠慮をせずに心地よく働ける、という点にもつながることが分かるでしょう。
とはいえ、環境の変化の中で「心理的安全性」がうまく機能している現場がなんと少ないことか(自戒を込めて)。特に私たちのように、複数人が協働してモノやサービスを作る「モノづくり組織」では、心理的安全性の有無が与える影響は大きいです。
モノづくりは一人で全てを担うことはできません。チームメンバー一人一人の役割からクライアントの役割における各階層やカスタマーの文脈や意図を「正しく伝達」し理解する必要があります。文脈や意図を知り、制作するということは、時には戻って確認したりテストを行い、行き来することでチームでよりよいプロダクトやサービスを作り上げる必要があります。
しかし、昨今はリモートワークなどの影響もあって役割分担が過度に進んでしまい、横のつながりや関係性を構築する必要性を感じにくい環境になってしまっているようにも思います。「自分が与えられた仕事や役割をしっかりやればOK」。そんな指向性を持つ人も少なくないでしょう。なんとなく、他人とのコミュニケーションがぎこちない。話が通じない……皆さんも一度は経験があるのでは?
しかし、モノづくりの組織で「分断」状態に陥ってしまうと、サービスやプロダクトの品質にも深刻な影響を及ぼしかねません。部分最適な発想に陥ってしまう、デザインの整合性が表現しづらくハリボテ感が出てしまう。セクショナリズムに苦しむ大企業などでも、似た話は多いかもしれません。
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企業風土は「会議」に表れる 本音を話せるミーティングをつくるためのルールCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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