企業風土は「会議」に表れる 本音を話せるミーティングをつくるためのルール(1/3 ページ)

» 2024年03月04日 07時00分 公開

 いま、ビジネスの世界において注目を集めている「心理的安全性」。組織において、個人が不安や恐れを感じることなく自身の考えを表現できる状態を指します。

 一方で、心理的安全性が高い職場チームをつくることはそれほど簡単ではありません。心理的安全性を高めるためには、メンバーが「この職場ではリスクを取っても大丈夫だ」と心から思えるようになることが必要なのですが、実際の職場は、むしろ「リスクだらけだ」と感じることが多いのが現実ではないでしょうか。職場の人間関係は、心許せる友人との関係のようにはいかず、さまざまな制約やしがらみもあります。

 今回は、心理的安全性を高めるための職場ミーティングの運営方法について紹介します。

言いたいことを言える会議はどうすれば実現できるのか。写真はイメージ(ゲッティイメージズ、以下同)

著者プロフィール:塩見康史(しおみ・やすし)

photo

株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。

クラシック音楽の作曲家として長年活動してきたユニークなバックボーンを持つ。

自身の芸術創造の経験をビジネスに応用し、一人一人が“らしさ”を解放し、また多様な個性が織りなす、ゆらぎや葛藤を新価値創造の源泉として生かしていくような、ダイナミックな社会と組織をつくる支援をライフワークとしている。

前職では、大手小売業の人事部門で教育体系の構築や採用戦略策定、人事制度策定に携わり、自ら変革当事者として積極的に取り組んだ経験を持つ。

スコラ・コンサルトに加わってからは、人事課題をはじめ、ミッション・ビジョン・バリュ−策定、戦略ビジョンなど、経営課題の全般にわたる知識体系を生かし、本質的な経営課題をあぶりだすアプローチを得意とする。「人間とは何か」という問いに昔から心引かれており、心理学や仏教をはじめ、哲学、東洋思想にも造詣が深い。

共著に『わたしからはじまる心理的安全性』(翔泳社)。


心理的安全性が低い職場のミーティング 特徴は?

 本当に心理的安全性の高い職場では、率直になんでも本音で話すことができます。誰しもそういう職場で働きたいと思っているのではないでしょうか。では、誰もが願いつつそうならないのはなぜでしょうか。それには、会社の組織風土が大きく影響しているのです。そして、会社の組織風土はどこに表れるかというと、その会社で行っている会議に表れます。

 筆者はこれまで、さまざまな会社の会議に同席してきましたが、会議の雰囲気というものは会社によって大きく異なります。そして、会議の雰囲気はその会社の組織風土を色濃く反映しています。

 ある会社では、メンバー皆がとてもオープンでフラットで、リーダーが誰だかすぐには分かりません。話し合いの仕方も双方向で、ユーモアを交えて活発です。時にはぶつかり合いながらも、真剣に温かい雰囲気で話しています。こういう会議では遠慮せずに意見を言い合えるので、新しいアイデアが出やすく、またアイデア同士が化学反応を起こして、イノベーティブな新しい発想や企画が生まれやすくなります。

 別の会社では、序列を重視した座り方で、重苦しい雰囲気が議場を支配しています。地位が高い人は概して高圧的で、メンバーの誰もが指摘や反論を恐れ、会議での口数は少なめです。発言は型通りで儀礼的です。本当に思っていることや、よくしたいという思いはもちろんあるのですが、発言することにためらいを感じます。そして、何か聞かれたときのために、おそらく使用しないことが明白な大量の補足資料を持参しています。この資料をつくるために膨大な時間がかかりましたが、作っている人も無駄な作業だと感じているので、モチベーションは下がる一方です。

 このように、会議のスタイルや雰囲気は会社によって実に多様です。残念ながら日本ではいまだに後者のような、どんよりとした会議が行われていることが多いのではないでしょうか。こういう会議からは、もちろん心理的安全性は醸成されません。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.