ロシアで企業による従業員への賃金未払いが拡大している。5月の未払い賃金は計約16億6千万ルーブル(約30億5千万円)に上り、1年前から3.4倍に増加した。主な要因は、ウクライナ侵略を背景として露中銀が設定してきた20%以上の政策金利により、利子の支払いに追われて手持ち資金が枯渇する企業が増えていることだという。未払い賃金の増加は景気後退の兆候といえ、プーチン政権は危機感を募らせている。
インタファクス通信によると、露統計当局は6月25旬、5月末時点の未払い賃金額を発表。企業の未払い賃金は4月から約1億8千万ルーブル増えて計16億6120万ルーブルとなった。業種は建設業が46.8%で首位。以下は製造業(11.5%)▽水処理・ごみ回収業など(9.3%)▽不動産業(7.6%)−と続いた。賃金未払いの主な理由は「企業の自己資金不足」だという。
ロシアはウクライナ全面侵攻直後の2022年3月、欧米主導の経済制裁による通貨下落を防ぐため、それまで1桁台だった政策金利を20%に引き上げた。同年6月に1桁台に戻したものの、23年夏以降は再び段階的な利上げに転じ、24年10月には侵攻後最高となる21%に設定した。露中銀は先月、1%の利下げを決定したが、それでも20%の高水準にとどまっている。
23年夏以降の利上げはインフレ抑制が目的だ。この時期、ロシアでは軍需産業の活況に伴う人手不足を受けた賃金増や、欧米による「制裁逃れ」対策の強化に伴う物流の複雑化などで毎年10%程度のインフレが進行。政権側はインフレが国民の不満を強め、ひいては軍事作戦への支持率を低下させる事態を危惧した。
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