トランプ関税が招く景気後退シナリオ 日本の「牛歩戦術」は限界か

» 2025年07月03日 08時19分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 トランプ米大統領が日本への関税引き上げを強行すれば、経済に取り返しのつかない悪影響が及びかねない。国内総生産(GDP)の押し下げ効果が最大3倍近くに跳ね上がり、景気後退の確率は50%を超えるとの試算がある。トランプ氏の揺さぶりに、安易に譲歩せずじっくり交渉する日本の「牛歩戦術」は見直しを迫られる恐れもある。

 米政権は日本への関税措置として自動車・自動車部品への25%、鉄鋼・アルミニウムへの50%の追加関税と、一律10%の相互関税を課している。

 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは相互関税が35%に引き上げられた場合、GDPの下落率は0.47%から1.10%に拡大すると試算。さらに自動車関税が鉄鋼と同水準の50%になれば、下落率は1.29%に及ぶ。この場合、「日本経済が来年にかけて後退局面に陥る確率は50%を超える」(木内氏)と指摘する。

 日本はこれまでの米側との協議で、自動車関税を中心に一連の措置の見直しを要求。拙速な譲歩を避け「ゆっくり急ぐ」(赤沢亮正経済再生担当相)方針で臨んできた。

 今後、物価高などトランプ関税の悪影響が米国内で顕在化すれば「秋ごろにも関税策を縮小させる方向に自ら動く」(木内氏)との読みもある。ただ、いらだちを強めるトランプ氏の矛先をかわしきれるかは予断を許さない。(中村智隆)

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