売れなかった「水筒みたいな氷のう」が逆転ヒット メーカーも予想しなかったSNSの“バズ”(2/3 ページ)

» 2025年07月08日 08時00分 公開
[大久保崇ITmedia]

売れない時期をどう乗り越えた?

 2021年、同社は布製の氷のうを専用ホルダーに収めたアイスパックを発売したが、市場の反応は鈍く、販売は伸びなかった。これを受けて用途とターゲットを見直し、スポーツシーン中心から「通勤・通学・外出」といった日常用途へと焦点を移行。氷のうも布製からシリコーン製のスティック型へと変更し、2022年には携帯性を高めた「ミニアイスパック」(実勢価格3280円)を開発した。

 しかし、この改良版も発売直後は市場に受け入れられなかった。形状から水筒と誤認されるケースが多く、想定された価値が伝わりにくかったことが原因である。

 状況が一変したのは2023年夏。とあるX(旧:Twitter)の投稿が“バズった”ことが大きな転機となった。

 「気温36度、エアコンなし小学校に登校する小1娘に持たせたもの」として紹介され、アイスパックの性能を端的にまとめた投稿が126万インプレッション、8000件を超える「いいね」が付き、大きな反響を呼んだ。

 この投稿がきっかけで、投稿主の地元である北海道のローカル番組をはじめWebメディア、ラジオ番組とメディア露出の機会に恵まれ、認知が広まっていったという。

 実は投稿主は、ピーコック魔法瓶がもともと2022年にマイクロインフルエンサーとして起用した人物だった。しかし、当時のInstagramの投稿は「そこまでの反響はなかった」と同社の広報担当者は振り返る。「(PR案件としての依頼ではなく、)お子さまの熱中症対策と『ネッククーラーの冷たさが復活する』という内容が、おそらくフックになったのではないか」(同担当者)ということだ。近年ますます過酷になっていく日本の夏と、「子どもを守るため」というメッセージが多くの人の心を打ったのかもしれない。

 この勢いを受け、2024年にはカラーバリエーションを刷新。よりカジュアルなモデルを投入すると、売れ行きは想定を大きく上回り、夏の終盤には在庫切れが各所で発生した。

子どもも使いやすい

 2025年には、さらに小型の「ミニアイスパックポケットABB-S07」(実勢価格2790円)や、大容量モデルなどを展開し、シリーズのラインアップを拡充。2021年から3年間の累計出荷数は約10万本だったが、2025年3〜5月の3カ月だけで30万本以上を記録した。

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