「Agodaのシステムには何らかの問題がある」 ホテル業界が名指しで批判しても、事態が改善しなさそうな理由(2/3 ページ)

» 2025年07月16日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

実は「Booking.com」と兄弟企業

 そもそもAgodaとはどのような会社なのか。同社は米Booking Holdings傘下のOTAであり、本社はシンガポールにある。同じホールディングス傘下のBooking.comはオランダに本社を置く。Agodaはアジアに強く、Booking.comは欧州に強いとされる。ちなみに国内勢のOTAとしては楽天トラベルやじゃらんなどが該当する。

 ビジネスモデルで分類すると、OTAには「エージェンシーモデル」と「マーチャントモデル」の2種類がある。エージェンシーモデルはホテルの空室情報を掲載し、予約成立時に一定の手数料をホテルから得る仕組みだ。マーチャントモデルでは、OTAが宿泊施設から部屋を仕入れ、上乗せして客に販売する。

 OTAから予約した客は一般的に、現地支払いとサイト上での支払いを選べるため、自身の予約がどちらのモデルによるか判別はできない。じゃらんなどの国内OTAはほとんどがエージェンシーモデルとされる。一方、Agodaなどの海外OTAは両方を併用している。

 いずれのモデルでも宿泊費の数十%程度がOTA業者の収入となる。そのため客から見た場合、一般的には宿泊施設のサイトで直接予約した方が安くなる。

いったい何がマズかったのか

 Agodaのトラブルに関しては、ビジネスモデルに問題はなく流通経路が関係している。Agodaに掲載されている空室情報のうち、約8割はホテルとの直接契約によるもので、残りの2割は仲介業者を介したものだ。

 例えば、AgodaはJTBと業務提携しており、JTBが保有する空室枠への優先アクセス権を有する。この場合、JTBが仲介業者となる。前述の通り、星野リゾートやホテルベストランドはAgodaとの直接契約を否定しているにもかかわらず、現在でもAgodaのサイトから両施設を予約できる。そのため、今回のトラブルは仲介業者を通じたやり取りに問題があったと考えられるわけだ。

 むろん、今回の騒動にJTBが関係したと言っているわけではない。仲介業者側のシステム関係のトラブルや、人為的ミスがあれば、Agoda上に誤った情報が掲載されるのは容易に想像できる。東横インは、提携サイトに提供している空室枠が一部のエージェントによってAgodaに“転売”されている可能性を指摘している。

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