百貨店業界に明暗 「呉服屋系」と「電鉄系」で差が付いた根本原因(2/3 ページ)

» 2025年08月13日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

「電鉄系百貨店」で苦境が鮮明に

 百貨店業界は高島屋のように呉服屋を祖業とする「呉服屋系」と、鉄道会社が運営する「電鉄系」に分類できる。同じく呉服屋系の三越伊勢丹ホールディングスは近年好調で、伊勢丹新宿本店の2024年度売上高は前年比12.1%増の4212億円となった。全国の百貨店でトップの規模を誇る。

 対する電鉄系百貨店の業績は芳しくない。西武百貨店は2003年にそごうと合併し、2009年から2023年までの間、セブン&アイ・ホールディングス傘下で営業を続けたが、縮小の一途をたどり、地方や郊外で閉店が相次いだ。電鉄系ではないが、そごうも同様に店舗を相次いで閉鎖。柏、八王子、川口、徳島店などが対象となった。そごう・西武は現在、米ファンドのフォートレス傘下にあり、西武池袋本店の不動産はヨドバシホールディングスに渡った。

 小田急百貨店は他社ほど多店舗展開していないため閉店が目立たないが、業績が悪化している。小田急電鉄の百貨店業売上高は2015年度の1537億円から、2018年度には1428億円となり、2020年度はコロナ禍で863億円となった。その後は会計基準変更のため単純比較できないが、2022年10月の新宿店本館の閉店に伴い、大幅に減少している。

 新宿店本館の跡地には高さ260メートルの高層ビルが建つ予定だ。しかし、低層階に小田急百貨店が出店するかは未定としている。新宿では小田急百貨店の閉店後、顧客が高島屋や伊勢丹に流れており、再出店しても戻ってくる見込みは小さいと考えられる。東急も2023年に閉店した渋谷本店跡地に百貨店を再出店しない方針だ。

小田急と東京メトロが新宿西口に建設を予定しているビルのイメージ(出所:プレスリリース)

百貨店衰退の主要因は中間層離れ

 百貨店の市場規模は1991年の9.7兆円をピークに減少し続けている。2010年代から6兆円前後を推移し、コロナ禍で4兆円台まで縮小した。2024年は5.7兆円台である。高級なイメージが強いため、バブル崩壊や「失われた30年」とともに嘆かれる百貨店の現状だが、衰退の主要因は中間層離れだ。

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