例えば、ソフトバンクの通信設備構築担当の統括部長だった男性のケースだ。男性は、新橋の路上でロシア人スパイに「いい店を知りませんか」と声をかけられ知り合い、何度も会ううちに会社の機密資料を金銭などと引き換えに提供。2020年に逮捕された。スパイは外交官の肩書きで来日していたため、不逮捕特権を持ち、捕まることなく帰国した。
また、千葉・幕張で開かれた展示会で、東芝子会社の社員がイタリア人コンサルタントを名乗る男(実際はロシア人スパイ)と知り合った。その後、飲食を重ねて親しくなり、半導体など軍事転用可能な機密情報を提供して現金を受け取り、2005年に逮捕されている。
京都では、2013年に祇園の中国人パブのママや中国人ホステスなどが、客として来ていた防衛関係者や大手電子機器メーカー関係者らからさまざまな重要情報を引き出していた。このママの親族は中国共産党幹部だったが、自衛隊関係者と偽装結婚し、摘発されている。
さらに2021年には、日本の防衛関連企業に対するスパイ活動のため、中国軍関係者が元中国人留学生に協力させていたケースもあった。スパイ工作はサイバー分野でも行われている。
こうした実例があるにもかかわらず、日本政府は8月15日、日本が「『各国の諜報活動が非常にしやすいスパイ天国であり、スパイ活動は事実上野放しで抑止力が全くない国家である』とは考えていない」とする答弁書を閣議決定している。つまり政府は、日本は十分にスパイ対策を行っていると考えており、そのためスパイ防止法を検討する可能性は低い。
では、実際に国はどのようにスパイ活動から防衛しているのだろうか。
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