長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
5月にセブン&アイ・ホールディングスの社長に就任したばかりの、スティーブン・ヘイズ・デイカス氏が、セブンーイレブンについて2030年度までに国内で1000店舗増やす構想を発表して話題になっている。
コンビニの国内店舗数は5万店を超え、既に飽和しており、短期間の大量出店は難しいと見られている。当該ニュースに対するSNSの書き込みでは、「できるわけない」という否定的なコメントが大勢を占めている。実際、日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの国内店舗数は、コロナ前の2019年12月に5万5620だったものの、2025年7月は5万5882と横ばいだ。
しかも、近年セブンの業績は、コロナ禍収束後の食材費、物流費、人件費などの、コスト高を受けた値上げにより、顧客離れが進んで頭打ちとなっていた。2025年2月期の決算によれば、国内コンビニエンスストア事業の売り上げにあたる営業収益は9041億5200万円(前年同期比98.1%)、営業利益は2335億5400万円(同93.2%)で、減収減益と厳しい結果に終わっていた。
デイカス社長も「近年はコンビニからディスカウントストアに顧客が流れる傾向がある」「当社は“食”に強みを持っていたが、競合他社が追い付いてきた」といった趣旨の発言をしている。セブンは安くないものの、適正価格で圧倒的においしいものを提供しているという、従来からあったイメージが棄損(きそん)されていることを、デイカス社長は十分に自覚している。
近年のセブンに対する悪評を象徴するのは「弁当の箱が上げ底になっている」との批判だ。購入者が、パッと見た目では分量が変わっていない、または増量されていると思って食べ進めてみると、随分と早くに底が見えてきて、だまされた気分になる。本当に上げ底で“ステルス値上げ”をしていたかどうかはともかく、こうしたイメージがつくのは致命的だ。
ウォルマート・ジャパン・ホールディングス(当時)のCEOなどを過去に務め、日本でのビジネス経験も豊富なデイカス社長は、英語に流ちょうな日本語を交えながら、「9月から、当社はコンビニ事業に特化した企業になる。これまで、スーパーや専門店に割いていた人材をコンビニに集中できる」と話す。
これまでは総合スーパー「イトーヨーカドー」やファミレス「デニーズ」の再建に苦慮してきた。今後は、もっとシンプルに、コンビニの価値向上だけを考えて行動できる経営環境が整った、とのことだ。果たしてセブンは、1000店増を実現できるだろうか。
セブンもファミマも取り組む「無人コンビニ」はなぜ、普及しないのか 実際に行って分かった「限界」
セブンのPB、価格・サイズを「見直し」 プチぜいたく需要に訴求Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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