コロナ禍を経て日本企業のBCPに対する認識は大きく変化した。月刊総務が全国の総務担当者216人に行ったアンケート調査によると、コロナ禍以前、BCPを策定済みだった企業は38.9%。想定リスクの大部分は自然災害(97.8%)で、パンデミックは58.3%と優先度が低かった。
BCPが未策定だった主な理由としては、「ノウハウ不足」(62.7%)、「時間がない」(59.7%)、「人材がいない」(46.3%)が挙げられた。BCPは経営判断を要し、継続的な見直しが必要な全社的な取り組みであるため、平時には緊急度が低く、後回しにされがちな構造的背景があるようだ。
コロナ禍の経験は、この認識を劇的に変えた。BCP策定済み企業の91.7%が既存計画の見直しの必要性を感じ、未策定企業の82.6%が策定しておけばよかったと痛感したのだ。その結果、今後対策が必要なリスクとしてパンデミックが87.0%でトップに躍り出て、自然災害(86.6%)とほぼ並んだ。
実際に役立った、あるいは必要と感じた対策は、テレワーク制度の整備(既存BCP企業で51.2%、未策定企業で66.4%)で、柔軟な働き方を支えるデジタル基盤の重要性を強く示している。このことから、従来の災害備蓄や安否確認といったBCPのイメージは変化し、DXの推進が、パンデミックのような予測困難な事態に対する有効な「守り」でもあるという認識が明確になった。
DXは効率化や生産性向上といった「攻め」の側面だけでなく、事業継続という「守り」の観点からも不可欠であると再認識された。今後、BCPは単なる計画書ではなく、日々の業務プロセスそのものにレジリエンス(回復力・しなやかさ)を組み込むため、デジタル化と危機への強靭化を一体として捉えるべきテーマであるといえる。
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