新進工房は、伝統的な職人技に加え、顧客からのフィードバックを真摯(しんし)に受け止め、スピーディーに新商品の開発に反映する姿勢で、根強いファンを獲得してきました。
一方で、ブランドをさらに広めていくには、より多くの人の声を聞く必要があると考えていました。そこで着目したのが、何らかの理由で「買わなかった顧客の声」だったのです。
新進工房が実施したのは、商品ページ上でいわゆる「お気に入りボタン」(Makuakeでは“気になるボタン”)を押しながらも、購入には至らなかった人たちの声を聞くことでした。これは実店舗に例えるなら、商品を手に取ったものの購入を見送った顧客に、その理由を聞くことと同じ取り組みだといえます。
新進工房は、顧客インサイトを分析できるリサーチサービス「Makuakeインサイト」を活用し、お気に入りボタンを押したものの購入には至らなかった顧客に対し、その理由を尋ねるアンケートを実施しました。
その結果、彼らが探していたのは必ずしも「革のバッグ」ではなく、「自分が欲しいデザインのバッグ」であり、それを探しているうちに新進工房のバッグにたどり着いていたことが分かりました。そして、実際に商品を見て「重そう」「雨の日の手入れが大変そう」「(特に女性の場合)欲しいカラーがない」と感じ、購入を見送っていました。つまり、買わなかった顧客の多くが、革製品自体に漠然としたイメージや不安を抱いていたことで、購入に至らなかったのです。
この貴重な「買わなかった顧客の声」を、新進工房は新商品に反映しました。「重さ」への指摘には、素材や構造を見直して軽量化を実現。「雨の日のお手入れ」への不安には、初回特典として防水スプレーを付け、「カラー」への要望には女性向けの新色を積極的に追加しました。
こうした改善が功を奏し、その後のプロジェクトでは新規顧客の割合が8割強にまで増加。平均の応援購入金額も大きく伸びる結果となりました。
その結果、新進工房では過去最高となる3600万円を超える応援購入金額を達成したプロジェクトも生まれました。
新進工房の事例が示すように、新規顧客獲得のヒントは、すでに購入してくれた「既存顧客」ではなく、購入直前まで至ったものの「買わなかった顧客の声」の中にあるのかもしれません。
彼らは最も購入に近い存在といえます。これはECに限らず、あらゆる業態に通じる発想ではないでしょうか。
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