小林氏がコロコロコミックのYouTubeチャンネルを担当することになった2019年、「コロコロチャンネル」の登録者数は約35万人、月間再生数は1000万回ほどだった。複数のチャンネルを運営している現在と異なり、当時は「コロコロチャンネル」の1つのみを展開していた。担当者から「登録者数を100万人にしてほしい」とお願いされたが、小林氏は「100万人登録は難しいです」ときっぱり答えたという。
コロコロコミックのメイン読者は小学3〜5年生の男子だ。当時の小学生は636万人ほどであるため(文部科学省調べ)、1学年100万人と仮定しその半分を男子とすると、ターゲット層の人数は150万人程度。チャンネル登録していた35万人のほとんどが小学3〜5年生だとすると、既にコロコロコミックのメイン読者の23%に届いていた。小林氏は「無理にチャンネルを大きくするのはやめたほうがいいのではないか。もう十分届いていると思った」と振り返る。
しかし2019年当時、YouTubeは子どもたちの生活に浸透し、日常的に視聴される存在となっていた。小林氏はYouTubeが「子ども達の生活に無理なく入り込み、社会インフラになりつつあった」と見ていた。そうした状況を踏まえ、コロコロコミックとしてもYouTubeに本格的に取り組む価値があると判断。既に一定の成果を挙げていたチャンネルを、今後どのように展開していくかを検討し始めたという。
その際に活用したのが、製品が市場に登場してから消えるまでの変遷を、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つの段階で説明する「プロダクトライフサイクル(PDL)」の考え方だ。当時のYouTubeでは、ちょうどテレビタレントが自らチャンネルを作ったり、コスメ専門のユーチューバーが登場したりしていた時期だったという。小林氏は、当時の状況が「成熟期の入り口」であると分析し、今後はチャンネルごとの「差別化」が必要になってくるのではないかと考えたという。
そこで、打ち出したのが「マルチチャンネル化」だった。デュエル・マスターズや、BEYBLADEなどは誕生から20年以上たっているため、小学生だけでなく大人のファン層も厚い。1チャンネルでの拡大ではなく、コンテンツごとに専門チャンネルを立ち上げる戦略に舵を切った。
動画制作では、それぞれ異なった強みを持つ外部の映像会社4社を選定。それぞれの強みを生かしながら「互いにコンテンツを競えるような環境」を作ったそうだ。さらに小回りが利くコンテンツ作りができるよう、編集部内で人材を集め内製チームも立ち上げた。
これらの取り組みの結果、コロコロコミックの複数のチャンネルを合わせた登録者数は300万人、月間2.4億回再生を達成した。小学館全体でのYouTube再生回数は2.6億回(5月時点)で、コロコロコミックが運営するチャンネルだけで全体の91.2%を占めているという。特に、悪魔系ユーチューバーが登場する漫画『ブラックチャンネル』を元にしたアニメを中心に配信しているYouTube「ブラックチャンネル」は月間1.1億回再生と、同社で最も再生されている。
小林氏は、「子どもたちが普段どんな動画を見ているのか、どんな動画がヒットしているのかを勉強した。そこにコロコロコミック編集部の制作ノウハウを掛け合わせた時に、今までにないものができる」と語った。
この記事にも誤字があります “日本語の間違い本”が話題の理由
「子どもだから分からなくていい」は間違いだ――やなせたかしが貫いた美術館のあり方Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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