前評判が一転 「iPhone Air」に集まる称賛と期待のワケ

» 2025年09月12日 07時00分 公開
[ロイター]

 米Appleが9日公表した歴代最薄型の新型iPhone「Air」(エア)は、同社製品の停滞ぶりに不満を持っていたファンやアナリストにとって過去8年間で最大の変化となった。

 ティム・クック最高経営責任者(CEO)が新製品を披露する姿は、前任者でデザインの天才、故スティーブ・ジョブズ氏が乗り移ったかのようだった。カリフォルニア州クパチーノの本社で開催された製品発表イベント冒頭、クック氏は「われわれにとってデザインとは、見た目や手触りの良さを超えたものだ。デザインとは機能でもある」というジョブズ氏の言葉を引いた。

 多くのアナリストは事前に、新製品への反応はいまひとつだと予想していた。しかしイベント後には「iPhone17」「iPhone17Pro」「iPhone17Pro Max」を加えた4商品について、さまざまな予算レベルの顧客層にアピールする品ぞろえだとの声も上がった。

米Appleが公表した歴代最薄型の新型iPhone「Air」は、同社製品の停滞ぶりに不満を持っていたファンやアナリストにとって過去8年間で最大の変化となった。カリフォルニア州クパチーノで撮影(出典:ロイター)

「発表と同時に大きな拍手」

 「発表と同時に大きな拍手が起こった」と語るのは、約2400万人のフォロワーを持つユーチューバーのガウラブ・チャウダリー氏だ。同氏は「iPhone Air」のチタンフレームと「セラミックシールド」ガラスを称賛し、事前に多くのリーク情報を耳にしていたにもかかわらず、実機を手に取った際には感銘を受けたと話した。

 ただ同氏は、バッテリー持続時間がアップルの主張通りかどうかは今後確かめたいと語った。

 技術コンサルティング会社クリエイティブ・ストラテジーズのベン・バジャリンCEOも、バッテリー持続時間を確認することが重要だと指摘した。バンジャリン氏は、Appleが10年以上にわたりエネルギー効率と小型化に焦点を絞ってカスタムチップを設計してきたことが寄与するはずだと言う。

 ノートPC「MacBook Air」の名称とデザイン言語を継承した「iPhone Air」は、Appleファンが長年待ち望んだ製品かもしれない。他の既存端末と一線を画す外観を持ち、ハードウェア設計の驚異がミリ単位で詰め込まれている。

 PPフォーサイトのアナリスト、パオロ・ペスカトーレ氏は「同質化が進んだ時代に、Appleが新製品を市場に投入するのは素晴らしい。iPhone全体を活性化させるだろう」と語る。

iPhone Airの弱点

 ただ「iPhone Air」はカメラを1つしか搭載していないという弱点がある。基本モデルの「iPhone17」は2つ、「Pro」モデルは3つだ。また今回は、AI機能に関する新たな発表がなかった。

 アナリストらは「iPhone Air」が機種変更を促し、年末商戦期にAppleの売り上げを押し上げる可能性が高いと指摘している。

中国市場での逆襲なるか

 また中国市場でAppleが顧客を取り戻す一助になりそうだとの指摘もある。

 中国では、より薄型のスマホを導入した競合他社に市場シェアを奪われているからだ。バジャリン氏は「これはスマホにおける小型化の極致だ」と述べた。

 「iPhone Air」の価格はiPhoneラインアップの中間に位置し、IDCによれば2025年前半に市場投入され第2・四半期に100万台を出荷したサムスン電子の「Galaxy S25Edge」の発売時価格より100ドル安い。IDC幹部は「この価格設定が販売を後押しするだろう」と述べた。

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