ロボット活用は日本の小売業でも進むか 企業が“及び腰”になってしまう根本理由(1/3 ページ)

» 2025年09月24日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーなどで小売業・消費財メーカーを担当。2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。


 経済産業省によると、2027年には物流ドライバーが約24万人も不足し、2030年には物流需要の3割以上が運べなくなるという試算がされています。また農林水産省によると買い物困難者(食料品アクセス困難者)の人口は2020年時点で904万人、パーソル総合研究所・中央大学の「労働市場の未来推計2035」によれば、2035年に必要とされる7505万人相当の労働需要に対し労働供給は7122万人相当と予想されています。

出所:ゲッティイメージズ

 このような未来が待ち受ける中、小売企業各社では自社の採用状況や出店計画、定年退職者の計算によって、どれくらいの人員が不足するかを予想しています。もはや人員不足に対応するだけでは経営が成り立たず、収益の安定成長を実現するために、業務の効率化と高度化の両立を図るロボット活用の必要性がさらに高まってきているといえるでしょう。

 次の図は、2012年頃から2025年までの小売業のロボット活用に関する主要なトピックスを整理したものです。

 2012年にAmazonが7億7500万ドルでロボット開発企業のKiva Systemを買収したことは小売業におけるロボット活用が加速した契機のような出来事でした。その後もさまざまなテクノロジーを駆使し、配送コストを25%削減しました。

 Amazonを追うように、2015年にウォルマートはドローン配送の実験を開始し、2017年には配送センターに倉庫自動化を支援するSymbotic社のロボットを導入。同年、ボサノバ・ロボティクス社との在庫・棚スキャンロボットの取り組みを開始しました。

 2019年ニューヨークにAI活用実験店舗(IRL)をオープンするとともにNuroの自動運転との提携を開始。2020年には食料品のドローン配送をFlytrex社と開始するなど、立て続けにロボットやAI分野での提携、実験を強化しました。

 2020年にはSymbotic社のロボットを全配送センター(42カ所)に導入し、2024年には1注文当たりの配送コスト40%削減を達成しています。このような推進と成果の半面、1000店舗にまで導入拡大していたボサノバ・ロボティクス社の店舗ロボット契約について、ROI確保に懸念が生じたことから打ち切るなど、世界一のウォルマートにおいても試行錯誤を繰り返していることが見てとれます。

 直近では、ウォルマートは2024年に注文の20%が3時間以内に配達され、さらに1配達当たりのコストを40%も削減できたことで、2026年度末までに、約65%の店舗で自動化サービスを提供し、約55%のフルフィルメントセンターで自動化設備を使用することを計画しています。

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