家族の転勤や介護……「悲しい退職」をゼロに AIG損保が挑んだ「転勤」改革「転勤は個人の成長に直結しない」と判断(1/3 ページ)

» 2025年10月31日 06時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

 自身、もしくは家族の転勤、親の介護。もし、何らかの事情で“住む場所”を変えなくてはいけないとしたら──。これまでは、勤めている会社を辞めて、新しい居住地で職を探すケースがほとんどだった。

 しかし中には「本当は仕事を辞めたくない」と思っていた人も多いのではないだろうか。もし、勤務地を選んで、今の仕事を続けられていたら……そう願ってきたビジネスパーソンは多いだろう。

 そのような勤務地が理由となる“悲しい退職”を減らすべく、転勤制度の改革に挑んだのがAIG損害保険などを含むAIGグループだ。同社は、会社命令の転勤をゼロにする勤務地制度「Work@Homebase」を展開している。

 福岡支店で働く山﨑美紀さん(営業第二課 シニアソリシター)は2024年、家族の介護のため、長年住んでいた東京を離れ、福岡に移住した。Work@Homebaseを活用することで、辞めることなく、仕事を続けることができたという。

介護のため東京→福岡へ 夫が先に移住し、3年間は別々に暮らしていた

 山﨑さんは中途で入社してから約25年間、東京を拠点に旅行保険を扱う部署に所属していた。

 福岡へ移住したのは、家族の介護のためだという。

 「夫の母が福岡に住んでおり、介護のために移住を検討していました。もともと夫は福岡に戻りたいと話しており、高齢の母が一人で暮らしていることも心配でした」

 夫が先に福岡に移り住み、3年ほど別々に暮らした。山﨑さんはその間に福岡支店への異動を申請。約2年後に人事面での調整がつき、異動が実現したという。「AIGという会社が非常に気に入っていて、できれば会社を辞めずに違う拠点で働くという選択をしたいと考えていました」

 「住む場所を変えるというのは、すごくストレスのかかること」だと山﨑さんは続ける。住環境が変わることで、買い物一つとっても慣れないスーパーに行くことになるし、ちょっと移動をしたり、外出をしたりする際、何らかの“初めて”な体験が増える。それらが積み重なることでストレスを感じたり、疲れを感じたりするケースは多いものだ。

 「仕事も変えて全てを大きく変えるのではなく、社内の事情やビジネスについて分かっている環境で働くことで、ストレス要因を減らしたいと考えていました。今も、その選択をしたことは正しかったなと感じています」

 実際、山﨑さんの家族もWork@Homebaseの存在に感謝しているという。

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