あなたの「正しい提案」が会議を通らないワケ 社内を支配する“根回し”の技術「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/4 ページ)

» 2025年11月12日 10時04分 公開
[横山信弘ITmedia]
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根回しが必要なケース、不要なケース

 すべての会議で根回しが必要なわけではない。根回しが必要なケースと不要なケースを見極めることが大事だ。

 根回しが必要なのは、次のようなケースである。

  1. 重要な意思決定を伴う会議
  2. 複数部署に影響を与える提案
  3. 過去に反対意見が多かった類似案件

 これらのケースでは、事前の根回しが成功の分かれ目になる。いっぽう根回しが不要なのは、おおむね次のようなケースだ。

  1. 定例的な報告会議
  2. 情報共有が目的の会議
  3. 緊急性が高く、即座に判断が必要な案件

 これらの場合は、根回しに時間をかけるよりも、会議で直接議論したほうが効率的である。

 根回しが必要かどうかを判断する際は、「この提案が通らなかったら、どれだけの損失が発生するか」を考えるといい。損失が大きければ大きいほど、丁寧な根回しが必要だ。

「モーレツ確認」で根回しを完了させよう

 最後に「モーレツ確認」について解説したい。根回しで重要なのが「モーレツ確認」だ。モーレツ確認とは、認識のズレがなくなるまで徹底的に確認を続けることである。

 建物を建てるときの設計士を思い浮かべてほしい。設計士は施主に対して、何度も何度も図面を見せて確認する。「本当にこの図面で家を建てていいのか」「この間取りで問題ないか」「予算は大丈夫か」と、しつこいぐらいに確認するものだ。

 それはなぜか。一度建ててしまったら、やり直しがきかないからだ。曖昧な合意のまま進めると、後で大きなトラブルになる。だからこそ、設計士は施主が完全に納得するまで確認を繰り返す。

 根回しも同じである。「だいたい理解してもらえた」という曖昧な状態で会議に臨んではいけない。相手が本当に理解しているか、本当に賛成しているか、モーレツに確認するのだ。

 具体的には、次のような確認をする。

 「今説明した内容について、何か懸念点はありませんか?」

 「この提案に賛成していただけますか?」

 「会議の場で反対意見が出る可能性はありませんか?」

 「他に確認すべき人はいませんか?」

 このように、あらゆる角度から確認する。相手が「大丈夫」と答えても、本当に大丈夫か見極める。表情や声のトーンから、不安や疑問を感じ取ることだ。

 モーレツ確認は、相手にとっても有益である。理解が曖昧なまま会議に出席すると、後で「聞いてない」「そんなつもりじゃなかった」と問題になるからだ。事前にしっかり確認しておけば、そうしたトラブルを防げる。

 根回しは、単に事前説明するだけではない。関係者全員が完全に納得し、会議で賛成してくれる状態まで持っていくことだ。そのためには、モーレツ確認が欠かせない。

まとめ

 会議で提案を通すには、根回しが9割だと言っても過言ではない。いくら優れた提案でも、根回しなしでは通りづらい。関係者の感情を無視した提案は、反射的に反対されるからだ。

 根回しを成功させるには、俯瞰的な視点を持ってステークホルダーを正しく把握することだ。そして「モーレツ確認」で、認識のズレを完全になくす。建物の設計士のように、何度も何度も確認を重ねるのである。

 根回しは古い慣習ではない。組織が複雑化した現代だからこそ、ますます重要性を増している。丁寧な根回しができる人こそ、組織で成果を出せる人材なのだ。

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