一つ目の距離は、言わずもがな「物理的距離」の近さだ。人々の日常に溶け込んだコンビニの経営にとって、より多くの人の生活圏に近いことは正義と言っても過言ではない。
沖縄ファミマにおける出店マップを見ると、人口が集中する本島中南部を中心に離島も含めて満遍なくネットワークが張り巡らされていることが分かる。ただ、同社は店舗数の多さや出店スピードを優先事項に置いているわけではない。岸本氏は「店舗開発で一番重要なのは精度です」と言い切る。
例えば、ある場所に既存店があり、それなりの水準の日商を記録しているとする。それでも、100メートルほど先により良い立地が空いたなら、家賃が上がっても移転する。いわゆる「ビルド&スクラップ」を繰り返しながら、最適なポジションを追求してきた。
地域ド密着という言葉通り、ここでいう「良い立地」も地域目線で模索する。
沖縄は全国で唯一鉄軌道が無い県であり、極度の車依存社会だ。那覇市と浦添市をまたぐ沖縄都市モノレールはあるが、一路線のみ。いわゆる「駅前文化」は極めて薄い。そのため、那覇市のオフィス街にある店舗以外はほぼ車での来店客がメインとなる。
とはいえ、出店場所は単に交通量が多い場所を選べばいいわけではない。店舗前の道路の向きや交通の流れ、バスレーンの有無、車のスピード感など、敷地選びは「地元の人にしか分からない肌感覚」まで踏まえた上での判断だという。約200人の社員を擁する沖縄ファミマの地元出身者の比率は、実に98%。生活者としての実感を持ったスタッフが出店判断に関わることが、精度の高い出店戦略を支えているのだ。
以前からこの方針を貫いてきたことは、高い競争力を維持している要因の一つだろう。岸本氏も「一番立地というのは割と奥が深い。良い立地に見えても、コンビニ的に見ると良くないことも多い。私たちは先行企業なので、良い立地を押さえているのは大きいです」と自負を見せる。
コンビニ激戦区で、沖縄ファミマが「首位堅持」 成長支える人材戦略に迫る
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